斎藤佑樹が明かすマー君への複雑な想い 田中将大とのプロ初対決後の「4年間の差」発言の真相 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 マー君のように圧倒的なパワーで抑えることは僕にはできませんでしたが、試合で勝つには、ピッチャーとしてのパワーとは別の要素も働きます。野球はピッチャー対ピッチャーの対決ではないし、たとえば初対決の試合も9回表、最後に満塁ホームランが飛び出していたら、その一発で結果が変わっていたかもしれないわけで......言い出したらキリがないし、ああいうところで絶対にホームランを打たせないのが、マー君のすごさだと感じています。

 でも、野球で勝ち方はいくつもある。そういう紙一重のところで結果が変わっていくとしたら、当時の差がそんなに大きなものじゃないと考えていたのは、自然だったかなとも思います。

 当時は僕だけじゃなく、大学に進んだみんなが4年間で何かをつかもうと懸命に野球をやっていました。(早大の)應武(篤良)監督にも『おまえらの4年間の価値は死んだ時に出てくる、だから試合でもし負けても、その一回で勝負はつかないからな』と言われてきました。野球の勝ち負けは大切ですけど、まず人間として、野球から学ぼうという気持ちが大きかったのかもしれません。

 与えられている物理的な時間は高校からプロへ行こうが、大学へ行こうが、一緒です。でも、野球に取り組める最新の環境と集まってくる情報量は、プロ野球のほうが圧倒的に多いだろうと思っていました。

【意識していないはずはない】

 その一方、大学では野球ばかりに時間を費やせない分、学校で授業を受ける時間とか寮に帰って宿題や課題に取り組む時間、レポートや論文を書く時間......そういういろんなことに追われます。そう考えると、大学生はいくつものタスクを整理して、さまざまなジャンルのことを学び、思考していく。それをすぐ野球に生かせるとは限りませんが、何かを吸収したり、積極的にアクションを起こしたり、人としてのキャパシティを広げることにはつながるんじゃないかと思います。

 マー君がどう思っていたのかはわかりませんが、僕は世の中の"マー君と佑ちゃんってこうだよね"という流れに引っ張られていたのかもしれません。いろんな点で対照的な2人......比較しようとする世の中の見方に、僕自身も流されているような感覚がありました。

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