ルーキー岩村明憲に「ユニフォームを脱げ」。ヤクルト二軍監督の八重樫幸雄が告げた理由 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【ペナルティとして一週間の練習禁止を言い渡した】

――どんな話をしたんですか?

八重樫 最初に、「おいガン(岩村の愛称)よ、何で試合に起用して、試合後にはお前だけ特守をしているのかわかっているのか?」と問いました。そして、「今のメンバーの中ではお前がもっとも一軍に近いんだ。守備さえ上手くなればすぐに一軍なんだぞ。大橋コーチも一生懸命、協力してくれているんだから、次にあんな不満そうな態度を見せたら、しばらくユニフォームを脱がせるからな」と言ったんです。

――それで、不満そうな態度は改善されたんですか?

八重樫 その後、2日ぐらいは言われたことを守っていたんだけど、3日目か、4日目にまた同じ態度が出たんです。だから、その日の特守後に監督室に呼んで、「おいガン、お前は明日からユニフォームを脱いで、しばらく休んでいろ」と言いました。「今度、ああいう態度を見せたらユニフォームを脱がせるって約束したよな?」って。

――それで、実際にペナルティを与えたんですか?

八重樫 一週間ユニフォームを着させずに寮で待機させました。初日は寮でじっとしていたらしかったんだけど、2日目は寮を抜け出したんです。

――謹慎期間中にもかかわらず、脱走したんですか?

八重樫 いやいや、そうじゃなくて、僕らが試合している間に寮を抜け出して、ひとりで土手に行って球拾いをしていたらしいんです。僕らは全然気がつかなかったんだけど、寮長が教えてくれて。それを聞いたんで、次の日から注意して見ていたら、確かに岩村が土手でファールボールを拾っていたんですよ。

――反省の意味もあるし、居ても立っても居られないという意味もあるんですかね?

八重樫 どうでしょうね。でも、アイツなりに考えるところはあったんだと思いますよ。だけど僕はあえて知らんふりして一週間はユニフォームを着させなかった。そして一週間が経って、「明日からユニフォームを着てグラウンドに来い」と言ったら、やっぱり嬉しそうでね。それからは不満そうな態度は一切見せなくなりましたよ。

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