クビ覚悟から侍ジャパンへ。楽天・田中和基は独特の発想で飛躍した (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Getty Images

「5月あたりからバッティングの感じがよくなりましたけど、僕としては『いつ悪くなるのかな?』と思いながら見ていましたね。だって、1年間ずっと調子がいい選手なんていませんから。ましてや、田中はレギュラー1年目でしょ。だから、そう感じるのは当然のことで。

 でも、結局はそこまで落ちることがなかった。田中は頭がいいんです。僕らコーチとの会話を真に受けるんじゃなくて、自分でも考える。発想は独特なんですけど、しっかりと会話ができるんです。そこが、田中のいいところじゃないですかね」

 田中の独特の思考。その最たる例を挙げれば、どれだけ打てない時期が続いても、彼の根幹をなすノーステップ打法だけは変えなかったことだ。

 その狙いを、田中が解説する。

「一軍の試合に出続けること自体が初めてじゃないですか。だから、やってみないと何を変えていいかも判断できないと思って。ノーステップって、続けていると『下半身がきつくなる』って言われるじゃないですか。実際、疲れてくると思うように動かなくなるときもあって......。

 そうなると、ウエイトトレーニングで鍛えたりするのかもしれないですけど、僕はやらなかったんですね。それをやったことでフォーム全体のバランスを崩してしまったり、ケガをするかもしれない。そうなるのが嫌だったんで。だから、今年はコンディショニングを最優先に。試合では自然体でやることしか考えなかったですね」

 今季の成績だけで言えば、3割前後をキープしていた打率は8月から下降し、最終的に2割6分5厘まで落ちた。

 だがそれも、自然体を意識してプレーした田中にとっては想定内のはずである。なにせ、今年は「初めて尽くし」の1年だったのだ。田中に言わせれば、満足はしていないが納得はしている。そんなパフォーマンスだったのではないだろうか。

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