「日本一の三塁コーチ」高代延博が阪神を変える
「チームの強さはシートノックと走塁を見れば分かる」
少し前のめりになり、遠い目をして語りだしたのは、今季から阪神タイガースの内野守備・走塁コーチに就任した高代延博氏だ。
昨年の秋季キャンプでも精力的に若手の指導を行なった高代延博コーチ。
WBC日本代表のコーチを2度務め、昨年、東京ドームで行なわれたWBC第2ラウンドの台湾戦で身を挺(てい)して糸井嘉男の本塁進塁を止めた姿は、野球ファンならずとも記憶に残っているのではないだろうか。
高代氏は、1954年に奈良県で生まれ、智辯学園、法政大学、東芝を経て1978年ドラフト1位で日本ハムに入団した。1年目から遊撃手でレギュラーとなりゴールデングラブ賞を獲得。翌年にはベストナインに選ばれるなど攻守に活躍。1989年に広島カープへ移籍し、翌年からコーチに転身。以降、広島、ロッテ、日本ハム、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチを務め、その間、現場を離れていたのは2009年と2013年だけ。但し、この2年間はWBC日本代表のコーチを担当しているため、実に36年間ユニフォームを着続けていることになる。
「野球をやる以外、何もできんからね。オレはユニフォームを着て、ノックバットを振り回している方が楽だし、性に合っているよ」
コーヒーを一口すすり、やはり目は遠くを見つめている。
文頭の言葉は、「チームの強さを一目で判断するにはどこに注目するか」という話題になった時だ。さらに詳しい解説が入る。
「クロスプレイでのあと一歩、この大切さをチーム全体で共有しているかどうかは、ランナーのセーフティリード(※)の幅、第2リード(※)の距離を見ればすぐに分かる。シートノックにしても同じ。一球をいかに大切にしているか。チームの文化、それがいかに徹底されているかが一番に表れるところやからね」
※セーフティリードは、ランナーがけん制された時にアウトにならない範囲のリードのことで、第2リードは投手が投球動作に入った後に取るリードのこと。
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