【プロ野球】田中将大の3つの武器。強い体とスライダー、もうひとつは? (2ページ目)

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 では、なぜ1年目から11勝も挙げることができたのか。その大きな理由として、スライダーが挙げられます。彼のスライダーは、打者の手元で鋭く曲がり、スピードもある。高校生で彼のスライダーに対応できた打者はいなかったと思います。それにプロの世界でもウイニングショットになる球だと思いました。

 よく「超高校級」と呼ばれる投手がいますが、そのほとんどがストレートの速さが基準になっています。140キロ後半や150キロを出せば、間違いなく「超高校級」でしょう。しかし、超高校級と呼ばれながら、プロ1年目から活躍した投手はほとんどいません。田中以外で思い当たるのは、1999年の松坂大輔ぐらいです。ふたりに共通していたのは、150キロ近いストレートのほかに、空振りの取れる球があったということです。いくら球が速くても、空振りの取れる変化球がないと1年目から活躍するのは厳しいということです。

 そして田中に関して特筆すべきことは、昨年までの5年間で65勝もの勝ち星を積み重ねたことです。これは現状に満足することなく、常に向上心を持ってやってきた証拠です。今年も尊敬するダルビッシュから教えてもらい、軸足に力をため込む新フォームに挑んでいましたよね。ああいう姿勢はすごく大事なことだと思います。

 また、フォーム改造にまつわる一連の報道を見て、あらためて田中という選手はすごいなと感心させられたことがありました。それは新フォーム挑戦中、やっぱり自分にはできないと判断し、すぐに元のフォームに戻したことです。もちろん、自己分析できる能力の高さもありますが、元のフォームに戻すということは、自分のフォームを確立しているからできることなんです。じつは、プロの選手でも、自分のフォームを確立できている選手は意外に少ない。だから一度でも改造してしまうと、元に戻せない選手が結構います。でも田中は自分のフォームを確立しているから、どんなことにもチャレンジできる。これはすごく大きいことだと思います。

 もうすぐプロ野球が開幕します。ずっと目標としてきたダルビッシュがいなくなった中、どんなピッチングを見せてくれるのか、非常に楽しみです。まだまだ彼には成長する要素がたくさんあります。昨年以上のピッチングを期待したいですね。

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