新基準バット導入元年 センバツ出場の選手、関係者に聞く「戦術の変化は?」「投手への影響は?」「飛ぶメーカーは?」 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

 このほか、中央学院の背番号17・岩崎伸哉が耐久戦の7回裏二死三塁でセーフティーバントを決めるなど、バント安打も増えている印象だ。

 投手側から見ても、新基準バットはプラスになっている。明らかに飛ばないため、思い切って投げられるからだ。宇治山田商のエース・田中燿太は球速130キロ台前半と球威のあるタイプではないが、「以前だったら外野を越えていた当たりが抜けないでアウトになる。長打が出ないのでコースを狙わず、多少アバウトでもいいという気持ちで投げられます」と精神的な負担減を口にしていた。

 また、豊川対阿南光戦では投手ライナーが2本あった(1つは捕球。もう1つははじいた球を拾って一塁送球してアウト)。いずれも鋭い当たりで、以前のバットならもっと打球速度が速く危険だった。こちらの面でも導入の効果はあったといえる。

 最後に、バットのメーカーについてもつけ加えておきたい。大会前、筆者にはイーストンとゼットの評判のよさが伝わっていた。実際、各チームで使用割合を聞くと、明らかにイーストンとゼット(ゼットパワー)を使うチーム、選手が増えた印象だった。

 それでもやはり多かったのはミズノ。筆者には、前規格で人気だったミズノの『Vコング』は低反発になり「バランスが変わった」と不評が伝わっていたが、多くの選手が使用していたのはミズノプロのオーダー。トップ、ミドル、カウンターのバランスやグリップテープの種類などを自分で選べることが人気の秘密だ。

 だが、このバットはオーダーのため既製品よりも高価(4万円ほど)。低反発になり、ただでさえバットの価格が上がったのにさらに高い。甲子園出場校のあるチームの指導者は「公立校はとても買えませんよ」と嘆いていた。

 2001年にバットの変更(最大直径67ミリ未満、重さ900グラム以上)が行なわれた際も、導入当初は影響が出たが、数年経つと従来のように打つようになった。新基準の低反発バットの時代はまだ始まったばかり。メーカーもこれから改良を重ねてそれなりに飛ぶようになるだろう。打者の技術面とともに、どう変わっていくのか。今後に注目していきたい。

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