甲子園を逃した「高校ナンバーワン投手」大阪桐蔭・前田悠伍に見え隠れしたかすかな不安 (6ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

「1球1球、気持ちが入っているなと思いました」

 そう短く語ったが、福田のボールの強さ、速さは相当まぶしく見えたのではないだろうか。つづけて、これから先に向けて「細かいところの修正を徹底してやっていきたい」と課題を挙げる前田に、「真っすぐで攻め込んでいける強さも必要?」と聞くと、少し強めの口調で返ってきた。

「今日は真っすぐで攻めるところは攻めていけましたし、三振もとれていたので。あの場面(4回の二死満塁)もチェンジアップの選択自体は間違ってなかったと思います」

 前田の力を知るからこそ物足りなさは残ったが、夏の初戦よりもこの日のボールはたしかに上向いていた。もし甲子園へとたどり着くことができていれば、もうワンランク上のストレートに出会えていたのだろうか。この夏のつづきは、次なる舞台での楽しみとしたい。

プロフィール

  • 谷上史朗

    谷上史朗 (たにがみ・しろう)

    1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。

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