金光大阪、大阪桐蔭、履正社の不思議な三角関係...「2強時代」に待ったをかけるか (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

【大阪桐蔭の府内連勝記録を56で止める】

 夏の大会前、大阪府高槻市にあるグラウンドを訪れ、横井監督に「この夏は春の大阪王者。大阪桐蔭に勝った金光と注目されますね」と冗談っぽく問いかけると、こんな答えが返ってきた。

「いやいや、桐蔭さんの大阪56連勝、(府内で)7大会負けなしなんて普通はありえない話ですから。さすがに『どこかで負けるやろう』というのは誰しもあったと思うんです。その相手がたまたまウチだっただけです」

 とはいえ、大阪では2020年夏の独自大会で履正社に敗れて以来、負け知らずの王者を倒したのは紛れもない事実である。

「それに今年春の桐蔭は前田(悠伍)くんがおらず、いろいろ試しながらの戦いだったと思うんです。そのあたりがまだうまく噛み合っていなくて、言ってみればチームとして"底"の状態。対して、ウチは勝つことでチームが盛り上がり、一番いい状態。そこに雨で大会日程が延びて、平日の午後にこっそり、ひっそりと試合をやれたこともよかったんでしょうね」

 横井監督はそう謙遜するが、半分は本音だろう。ただ、この春は大阪桐蔭だけでなく、準々決勝では東大阪大柏原に完封勝ち。準決勝では大商大堺をタイブレークの末に下すなど、中堅私学にきっちり勝利。さらに近畿大会では滋賀1位の近江、京都1位の京都国際を破っての決勝進出だった。

「でも、最後はボロカスにやられましたから(智辯学園に0対10)。ただ、おかげさまで『自分たちは強くない。まだまだ』という気持ちを忘れず、夏に向かうことができました」

 智辯学園戦も、北野戦も、今春に大きな成長を見せたキャリーが先発しなかった結果ではあった。その点は承知しつつも、しびれるような激闘を繰り広げたかと思えば、予想外の大苦戦、さらに大敗と、つかみどころがない感じも金光大阪の魅力であり、高校野球の面白さをたっぷり備えたチームとも言える。

 熱も、負けん気も、自分たちの野球に対する誇りも強く持っている横井監督だが、時折、弱気な姿を見せることがある。昨年春のセンバツ前に訪ねた時のことを思い出す。

「甲子園ってコールドないですよね? 出場校の名前を見ていたら、どことやっても大敗しそうな気になって。(出場の)発表があってからずっとへこんでいるんですよ」

 そうは言いつつも顔は笑っていた。挑む相手が強くなるほど、自分たちの力がより引き出されることを十分に知っているからだ。

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