【新車のツボ39】スズキ・スイフトスポーツ 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 そんななかで、スイフトスポーツは日本車に残った唯一といっていい本格ホットハッチだ。136psという絶対パワーは特筆するほどではないが、その1.6リッターDOHCはスイフトスポーツ専用エンジン。MTもほとんど専用設計の6速。装着タイヤも銘柄、サイズとも本格的で、シャシーも隅々まで専用チューン。ホットハッチの本場である欧州にもほほぼこのまま売られるから、ボディのエアロパーツも最高速(欧州仕様だと190km/h台半ば)での安定性を本気で追求したマジモノ。

 つまり、スイフトスポーツは昔は走り屋で鳴らしたオジサンが、家族ができた今でも"オレ専用車"として買える価格で、かつマニア目線でもツボをしっかり押さえたスポーツモデル......という意味で、とっても貴重な存在なのだ。腕っこきのオジサンが無理せずに買うことができて、しかも本気で走りを楽しむのにピッタリ......というか、現状ではこれ以外の選択肢はほぼ皆無といっていい。

 最新スイフトスポーツは欧州の名だたるホットハッチと比較しても、その内容と味わいにおいてまったく引けを取らない。スズキの場合は、このスイフトスポーツこそ、みずからのクルマ哲学と技術力を世界中にアピールする役割も担う。

 この連載でも以前取り上げたように、ベースのスイフトからして、スズキ屈指の好き者エンジニアたちがマニアックなまでに作りこんだクルマだ。これはさらに"スポーツ"なのだから、彼らがよってたかって嬉々として作っている......のが乗るだけでわかる。ゴリゴリ曲がるだけの山道専用マシンといった風でもなく、市街地でもドコドコ突き上げられることもなく、高速ではピタッとまっすぐ走る。エンジンも低速では扱いやすいが、高回転でキッチリ抜けるように回って、MTはかっちり手応えよく決まる。ベースよりちょっとだけ高い価格をいいことに(!?)、各部品も高品質なものに換えてあるから、低速の乗り心地もベースより快適なくらいだ。

 こんなクルマがコミコミ200万円前後で買えるんだから、そりゃ(ワタシも含む)オジサンたちのツボを刺激する回春アイテムにはうってつけ。いやいや、若者の皆さんにもぜひスイフトスポーツに乗ってほしい。オジサンたちがいい齢こいて"クルマクルマ"といっている理由は、背高ワゴンやハイブリッドに乗っているかぎりは理解できないと思う。

【スペック】
スズキ・スイフトスポーツ
全長×全幅×全高:3890×1695×1510mm
ホイールベース:2430mm
車両重量:1050kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1586cc
最高出力:136ps/6900rpm
最大トルク:160Nm/4400rpm
変速機:6MT
JC08モード燃費:14.8km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:168万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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