野球部高校生の素朴な疑問に答える。「プロ野球日本一のオリックスってどんな会社?」 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【あまり知られていないBtoBの企業の活動】

奥野「由紀さんの言っていることが、まさにノンバンクの仕事の核になる部分だね。モノを貸すにしても、お金を貸すにしても、相手の信用を見定める必要がある。その信用度合いに応じて貸せたり、貸せなかったり、貸せるにしてもいくらまでという限度額を設定して、ちゃんと回収できるようにする。

 そういう意味では、お金の貸付を行なっている銀行と、信用を設定する対象物は違うけれども、やっていることはほぼ一緒だね。

 ただ、ノンバンクは銀行と違って、預金という形で不特定多数の人からお金を調達することが認められていない。信用を供与するうえで必要な資金は、銀行からの借入に頼る形になるから、基本的にお金を借りる場合の金利は高くなる。クレジットカードでどんどんお買い物をして借金まみれになる人がいるのは、そもそも金利が高いからなんだ。

 この点は、これから成人してクレジットカードを自由に作れるようになる君たちが、注意しなければならないことのひとつだね。

 そしてオリックスという会社は、リースを中心にして、幅広い事業領域を持っている。リースではパソコンやコピー機、建設機械、工作機械、産業機械、ショーケース、冷凍庫、厨房機器、自動車、医療機器があるし、割賦では空調設備やボイラー、看板、テーブル、いすなどをお客の代わりに購入して、分割で販売している。その他、債権の買い取りやその回収、生命保険販売、損害保険販売、不動産投資戦略、航空機や船舶のリースなど、さまざまな事業展開を行なっているんだけど、基本的に対企業の商売、つまりBtoBがメインだから、プロ野球チームとしてのオリックスは知っていても、ビジネスの中身まで知っている人は、きっとあまりいないんだろうね」

鈴木「やっぱりヤクルトのほうがわかりやすい!」

奥野「そう思うのはよくわかるけど、鈴木君が言っているのは『ヤクルト』という商品のことでしょう。確かに商品のイメージはよく知られているかもしれないけど、企業としてのヤクルトの本当の姿って、案外知られていないかもしれない。その辺りについては次回、詳しく説明するよ」
(この項、つづく)

奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

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