ミラン番記者が分析。今季の本田圭佑はなぜ好調なのか

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu 宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi

昨シーズンの不調から一転、今シーズンは開幕から好調を維持しているミランの本田圭佑。その要因を、ミラン番歴15年のイタリア人記者が分析した。

■昨シーズン、混乱していたミランの内情
 今季ここまで7戦で6ゴールと、本田圭佑は好調をキープしている。ただ、いかに本田自身のコンディションが戻ろうとも、クラブ内部の諸問題が解決されなければ事態の好転は容易ではなかった。事態の推移いかんによっては使われなくなる危険性もある。実際、その可能性がなかったわけではない。

第7節、アウェーのヴェローナ戦で2ゴールを決めた本田圭佑 photo by Getty Images第7節、アウェーのヴェローナ戦で2ゴールを決めた本田圭佑 photo by Getty Images しかし、そのリスクは"監督セードルフの解任"で大部分がクリアされた。セードルフ前監督は、ベルルスコーニ派としてGMガッリアーニと対立し、彼を退任に追い込もうとしていた。さらに、ミランの屋台骨を長く支えてきたマウロ・タソッティ(助監督)をも退団させようとしていたのだから、ロッカールームに不穏な空気が流れたのはもちろん、クラブ全体が無用の混乱に陥っていたことは容易に想像できる。

 事実、今年1月の時点でGMガッリアーニは退団確実と目されていた。そして、本田はそのガッリアーニが連れてきた選手である。"さまざまな意味で"当時の本田は難しい立場に置かれていたわけだ。

 しかも、彼はピッチ上でも逆風にさらされていた。それは、監督セードルフの"高邁な理想"であり、本田もまた、その犠牲者となっていた。つまり、「4−2−3−1」の右サイドでの起用である。そもそも、土台である守備をないがしろにした攻撃が機能しないのは当然のこと。ところが前監督は、いわゆる"バルサ的なる魅せるサッカー"でオーナーの気を惹こうとしたのか、チーム全体の意識を統率することができぬまま、単に攻撃的であろうとしていた。

 したがって、昨シーズンの終盤、今年4月に私はイタリア国内のメディアで次のように記していた。『本田が見るに耐えないプレーに終始しているのは事実。だが、今のミランの状況では、おそらくメッシでさえ満足にボールを受けることさえできないはずだ』と。それほどまでに昨季終盤のミランは混迷の極みにあった。

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