箱根駅伝で明治大は「この20年間のなかでも仕上がりがいい」山本豪・新監督が明かした指導法「要求するばかりはフェアじゃない」 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi
  • photo by Wada Satoshi

【ラストの1個手前から上げていく練習】

ーー予選会を2位で通過。その際にジョグを増やしたとおっしゃっていました。そこが課題だったのでしょうか?

 就任してすぐにそれは言いました。距離が長くなるとどうしても後半失速してしまう。そんなレースが明治は多かったと思います。僕も学生と一緒に走ったりするんですよ。その時に「どれぐらいジョグをしているの?」っていう会話をすることがあって、少ないなというのは感じていました。これまでにも個別に「もっとやったほうがいいよ」と言うこともありましたが、駅伝監督になったので全体に向けて明確に言葉にしました。

ーー予選会では、抑え気味に入る大学が多いなか、前半から果敢なレースを見せました。それでも、後半も順位を大きく落とすことなく2位通過。その成果が出たのでしょうか?

 いや、内容的には15kmから20kmがけっこう落ちているんですよ。そこは課題として残りました。予選会のあとも練習の時にはその点を重視しました。「最後はしっかりと(ペースを)上げる意識をつけていきましょう」と。全日本がなかった分、練習する期間を設けられたので、そこでもしっかり距離を意識しました。

 そのなかでも、インターバルでは最後は必ず上げる。たとえば、1000mのインターバルだったらラスト2本をしっかり上げて終えるようにしました。最後の1周を上げるだけだったら、誰でもできるので、その1個手前から上げていこう、と。

 成果が見えるのはこれからだと思いますが、上尾(シティ)ハーフ(マラソン)にしても、MARCH対抗戦にしても、調整なしで走って自己ベストを出した者が多かったですから、少しずつ力はついてきているのかな。選抜で行なった富津合宿も内容がよかったです。

 やってきた練習量を減らすという考えはないので、それが当たり前にならなきゃいけない。本当はもっとやりたいことはいっぱいあるんですけどね......。でも、今季はこの流れでいくって決めました。

ーー中距離ランナーを中心に指導されていたので、そのノウハウで、スピードに重きを置いて、そこから距離を伸ばしていくアプローチになるのかなと想像していました。

 それはたしかにありますよ。中距離といっても、僕のやり方は5000m寄りの1500mですから。中距離の選手たちも同じようにジョグを大事にしていました。20kmぐらい走れる走力がないと、1500mでも通用しないよ、っていう話もしていたので。

ーー1500mの日本記録を持つ、OBの河村一輝選手(現・トーエネック)もそういう指導だったんですか?

 そうです。前々回、箱根のメンバーに入った佐久間秀徳や、今回の馬場勇一郎(4年)も1500mで実績のある選手ですが、そういうアプローチでした。僕自身も現役の時に1500mをやっていましたが、歴代で1500mが強かった人って、みんな箱根駅伝を走っているんですよね。

 元日本記録保持者の石井隆士先生(日体大OB)もそうだし、前日本記録保持者の小林史和(現・愛媛銀行監督/拓殖大OB)も、現記録保持者の河村もそう。やっぱり5000m、1万mの走力がないと、なかなか1500mを走りきれない。中距離でも800mと1500mでは全く性質が違いますけどね。

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