青山学院大が駅伝に強いのはなぜか 「いい人材を選んでいる」「タイムがいいばかりではない」寮に散見する原晋監督の指導の礎と青学らしさ (3ページ目)

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

【取り巻く環境の変化と "青学らしさ"】

 そして第100回大会を迎えるにあたり、原監督は箱根駅伝を取り巻く環境の変化を感じている。

「競争が激しくなりました。過去10年を分析してみると、青学大には8連覇のチャンスがあり、本当にそうなってもおかしくなかった。ただ、私の区間配置のミスであったり、直前に主力選手の故障が出たりして、優勝を逃した年があった。つまり、ウチのミス。ところが、いまは駒澤だけではなく、全日本大学駅伝でも2位を争った國學院、中央も強い。間違いなく『戦国時代』に突入しているので、いま箱根駅伝で優勝するのは難しいと同時に、すごく価値のあることだと思う」

 いまも町田寮には目標管理シートが掲示され、学生たちも活発に議論を交わしている。特に今年は主力を張る3年生たちの意見が強く、4年生はチームをまとめる苦労した様子だ。今回の箱根駅伝の16人のエントリーメンバーには入らなかったが、主将の志貴勇斗(4年)はこう話す。

「いろいろな意見が出るのが"青学らしさ"なのかなと思います。黙っているより、率直な意見をぶつけられるのが青山学院の良さだと思うので」

 毎年、学生の顔ぶれは変わるのに、この10年以上、「青学らしさ」が保たれているのは奇跡かもしれない。それだけ、原監督が校風にふさわしい人材を選んでいるということだろう。

「走ることは表現手段。だから、言葉による表現が豊かな選手は伸びるんです」

 原監督のこの言葉に、青学大の魅力が凝縮されている。

 これからも、青学大は大きな存在感を発揮し続けるだろう。

プロフィール

  • 生島 淳

    生島 淳 (いくしま・じゅん)

    スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo

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