【続・東京マラソンへの道】中島彩「私がドMランナーになったワケ」 (2ページ目)

  • 中島彩●文・写真 text & photo by Nakajima Aya

 42.195キロのフルマラソンの場合、ある程度練習を積んで、タイムさえ気にしなければ、完走できる可能性はとても高いと思います。しかし、ウルトラマラソンはベテランランナーでも、「絶対に完走できる」という確証がないのだそうです。以前、ウルトラマラソンの世界記録保持者とお話する機会がありました。どんな気持ちでレースに臨んでいるのか尋ねると、「どんな大会でも、レース中に何が起きるか分からない。『完走できないかもしれない』という気持ちを、常に抱えながら走っています」と教えてくれました。

 何度もウルトラマラソンで完走しているランナーでも、「リタイアするかもしれない」という不安と戦いながら走っているなんて......。正直、とても驚きました。ただ、この方の気持ちは、僭越(せんえつ)ながら少し分かるような気がします。というのも、私が100キロのウルトラマラソンを走ったときは、いろんな出来事に苦しめられたからです。大雨に降られるし、突風は吹くし、さらに泥沼に足を奪われるし、想像していなかった困難だらけ。しかも、100キロという距離は、まさしく『未知なる道』なので、「いったい、いつになったら終わるんだろう」という不安を抱えながら走りました。でも、ゴールした瞬間、フルマラソンでは得られない達成感を得られたんです! フルマラソンを何度も完走していると、それに慣れてしまって、もっと刺激が欲しくなってくるのでしょうか。途方もない距離を苦しみながらも挑戦したくなるのは、私の中に秘められた「ドM精神」なのかもしれません(笑)。

☆ゴール後に湧き上がってくる新たな感情とは?

 ウルトラマラソンはレース中盤以降、だんだんと苦しくなってきます。スタートしてから数時間も走っていると、身も心も限界に......。コースの脇をクルマが通ると、「リタイアして、このクルマに乗りたい」と思いますし、「なんでこのレースに参加しようと思ったんだろう」「もう一生、走りたくない」とまで考えてしまいます(笑)。でも、周囲にいるランナーが私と同じゴールを目指しているので、なんとか足を一歩踏み出して、また走り続けるのです。

 そんな状態で唯一、私を癒してくれるのは、なんといってもエイドステーション(給食所)ですね。100キロマラソンに参加したときは、10キロごとにエイドステーションがあったので、食べて、走って、また食べて......(笑)。フルマラソンのように1分1秒を争うような雰囲気ではなかったので、「急いで食事をしなければ!」という焦りもありませんでした。その雰囲気が、とっても好きなんです!

 そして、ウルトラマラソンの魅力を語る上で、欠かせない感情があります。それはゴールしたあとに、じわじわと沸きあがってくる「自信」です。何度も挫けそうになりながら、最後まであきらめずにゴールまでたどり着けたという事実は、「今後、どんな困難にぶつかっても頑張って乗り越えられる!」という自信になりました。完走後は、ちょっと自分のことを褒めたくなりましたよ。そして、レースの疲れも癒えた3ヶ月後ぐらいには、「また、ウルトラマラソンで自分の力を試してみたいな」と思えたりするんです(笑)。

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