「1日3時間勉強したからといって五輪の結果は変わらない」五十嵐カノアが挑むサーフィンとハーバードの文武両道 (2ページ目)

  • 門脇正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【五輪前だから「こうしないと」はない】

ーー今年の夏はもうパリ五輪本番です。ビジネススクールに入ったのは昨年の秋ですが、なぜこのタイミングで?

 五輪前だから「こうしないといけない」ってことじゃなくて、パリ五輪前でも、いつもどおりにやっていきたいです。「五輪だからもっと頑張らないと」というのではなく、日常的に、これ以上頑張れないというところまでやっているから、ルーティンをしっかりとできていれば、自然といい結果が出る。1日3時間くらい勉強したからと言って、五輪の結果は変わらないと思います。

ーー進学に対する周囲の反応は?

 みんなビックリしていました。たぶんできないって思ったかもしれない(笑)。両方やるってことは、サーフィンやトレーニングの時間も大切にしつつ、勉強の時間も大切にする。それに、勉強はトレーニングのリカバリーにちょうどいい感じです。

 たとえばですが、みんながテレビや映画を見ている時間に自分は勉強しています。勉強で体は疲れないので、体はすごくリラックスできます。たまにお風呂に入りながら勉強したり、朝ちょっと早く起きて勉強してからサーフィンへ行ったり、夜ごはんを食べている時に勉強したり。朝3時まで寝る時間を削って勉強しているわけじゃないので、本当にいいバランスがとれています。

 これが違うスポーツとの両立だったら、体にとってヘビーになるけど、勉強は頭を使うことだから、思ったよりもヘビーじゃないと感じています。

この記事に関連する写真を見るーー勉強とスポーツは五十嵐選手にとってすごく合っているんですね。

 相性がいいと思います。もちろんどちらにも時間が必要なので、一日中サーフィンのトレーニングをやって、横になって寝たいなという日もありますが、ルーティンができていて意識しなくても、今はできるようになっています。

ーーパリ五輪で結果を出して、ハーバードでも結果を出したら「カノア、大丈夫?」と思っていた友だちも「おおっ、すごいじゃん!」って感じになりますね?

 なると思いますよ! 最初、友だちに言った時に「ホント、大丈夫なの? 絶対できないでしょ!」って言われていましたが、僕のルーティンを見ながら、ちゃんと努力しているとわかってきてくれて、今はみんなからリスペクトしてもらっています。

ーー五十嵐選手自身の手ごたえはどうでしょうか?

 アスリートは、みんなすごく努力をしていると思うんですが、スポーツだけではなく、他にも努力することは大切だと思っています。人間としてもバランスがとれて、より魅力的になれると思うんです。

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