フェンシング・江村美咲が味わった東京五輪の挫折「これ以上何を伸ばせるんだろう」。燃え尽き症候群を乗り越えパリ五輪金メダルへ (2ページ目)

  • 門脇正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 吉楽洋平●撮影 photo by Kichiraku Yohei

【燃え尽き症候群から進化できたきっかけ】

ーーそうなると、初五輪はどこか不完全燃焼という感じなのでしょうか?

 そうですね。今の自分が一番強いと思って試合に臨んだので、終わった時は、これ以上何を伸ばせるんだろうというショックな気持ちがありました。

 でもその反面、あとちょっと何か足りないものが見つかったら、見つけられたら、メダルにも手が届くかもと感じました。

ーーその後、2022年の世界選手権で好成績(女子サーブル個人優勝、女子サーブル団体3位)を残します。東京五輪が終わって、何か進化のきっかけはありましたか?

 五輪後も毎日すごく頑張っていたんですけど、何を学べばいいかわからないままに頑張っていたと思います。だから、途中でちょっとエネルギーが切れて、燃え尽き症候群みたいな感じがありました。

 そんな時に、フランスから来てくれたジェローム・グースコーチが、新しい気づきをくれました。

 サーブルでまだこんなに知らないことがたくさんあったんだ、まだこんなに伸びしろがあったんだって。本当に吸収することがたくさんあったんです。

この記事に関連する写真を見るこの記事に関連する写真を見るーー具体的にどんなことを学んだのでしょうか?

 東京五輪までは、韓国のリー・ウッチェコーチが約7年間見てくれて、日本のレベルはすごく上がったんです。リーコーチの指導は簡単に言うと、スピード勝負を重視するものだったんです。

 一方、フランスのスタイルはもっと繊細で、柔らかく粘って我慢して、たくさん動いて戦うイメージ。

 リーコーチのスピード勝負の土台に、繊細なスタイルがプラスされたのが、よかったのかなと思っています。

ーーこれから日本のフェンシングはサーブルにもますます注目が集まりそうですね。

 太田雄貴さんの時代は、フルーレで結果が出ていたので、フェンシングのなかでも金銭的なサポート体制の差もあって。うらやましかったり、少し悔しかったり、そんな気持ちがありました。

 今は本当に全種目で勝てるようになってきて、お互いが高め合っている。種目を越えて、ひとりが勝ったら、刺激されてまたひとり勝つみたいな、そういう関係性ができてるんじゃないかなと思います。

 サーブルはまだ五輪ではメダルを獲っていないので、次(のパリ五輪)こそはっていう気持ちはあります。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る