羽生結弦「もらったものをもっともっと返したい」『notte stellata』の演技に見た心境の変化 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【大地真央とのコラボ曲に込めた思い】

 その違いを羽生はこう語ってくれた。

「前回は初めて『3.11』という日に皆さんの前で演技をさせていただく経験をしましたが、正直、僕自身もつらい気持ちのままでした。あの日がまた近づくにつれて映像だったり文字だったり、写真だったりいろんなものに触れる機会が増えてくる。そういうなかで忘れてはいけない気持ちもすごくありますが、同時につらい思いをされている方もいらっしゃるんだろうなと思い出します。僕自身も過去の記憶を思い返したりするとつらくなってしまうこともあるし、それにとらわれながら滑っていたのが前回でした。

 でもそのなかで、皆さんから希望とか勇気とか元気とか、いろんなものをいただけたショーでした。そういう意味で今回は、僕があの時にもらったものをもっともっと返したいな、希望を届けたいなと思いました。新しいプログラムの『ダニーボーイ』もそうですし、大地(真央)さんとコラボした『Carmina Burana』に関しても、曲調はたしかに強さがありますが、そのなかで立ち向かうものを感じていただけたらなと思って滑っています。そういった意味では去年とは、本当に心意気がまったく違った、コンセプト自体がまったく変わったショーになったのかなという気持ちでいます」

 大地真央とコラボしたプログラムについて羽生は、「大地さんとも何回も何回もリハーサルを重ね、本当に細部までこだわってくださってでき上がった演目なので、自信を持って皆さんにお見せできるコラボレーションになったなと思っています」と語る。

「まだ世界をちゃんと知らない無垢な少年が、幸せを感じながら生きているなか、成長していくことで運命の女神が現れてその運命にとらわれていく。自分が自由に無垢に動くだけではなく、運命の歯車に左右されて自由に動けなくなっていく。でも、最終的にはその運命もすべて受け入れて、自分が運命そのものと対峙しながら自分の意思で進んでいくんだ、というストーリー。

 僕はこのストーリーのなかに、津波だったり震災であったり、今は能登半島地震のこともありますが、天災などの人間の力ではどうしようもない、そういう苦しみを感じたとしても、そこに抗いながらもそれを受け入れて進んでいくんだ、という強いメッセージみたいなものを込めたいなと思いながら滑っています」

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