坂本花織の「まあいいか、も必要」の金言 島田麻央は「次にノーミスができたら自分を褒めてみようかな」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【「自分をほめる」女王・坂本花織の金言】

 11月の全日本ジュニアまでは、2本そろえることを目標とするトリプルアクセルと4回転トーループの大技でミスが出ても、他の5本のジャンプは確実に決める安定感があった。だが、ジュニアGPファイナル、全日本と2試合続けてミスが出てしまった。

 4回転トーループのあとは、ミスを抑えようという気持ちが強くなったのか、慎重すぎたのかもしれない。それもあってか全体的にジュニアの試合よりも少し淡泊な滑りになったのは否めない。演技構成点は国内大会では国際試合より高めに出る傾向があるが、今回の島田は、プレゼンテーションとスケーティングスキルはジュニアGPファイナルより低く、3要素の合計も1点以上、低い得点になっていた。

「やっぱり全日本という舞台は、他の試合と違う緊張感が出てくる。それに勝てなかったかなって思うので、次は勝てるようにしたいです」

 15歳で全日本の緊張感を体感できるのは貴重だ。次に控える大舞台は、2024年1月のユース五輪と連覇を狙う2月下旬開幕の世界ジュニア選手権。そこでは同世代の選手たちと競り合うなかで、「大技ジャンプ2本をそろえる」目標に専念できるはずだ。

 試合後の記者会見で坂本が、「トップを走り続けるために必要なメンタリティは?」との質問にこう答えた。

「完璧な演技を求め続けるけど、たまには『まあいいか』っていうのも必要かな。あまりに完璧を求めすぎるとどうしても力が入りすぎて、体が思うように動かなかったりする。自分が目指しているところまで行けなかったらダメだと、自分に厳しくしすぎないようにしている。たとえば、なかなかノーミスができなかったのにある日、急にノーミスができるようになったら、『自分はすごい』という感じで自分自身を褒めて伸ばす。今シーズンはずっとそうやってきています」

 世界女王の秘訣を聞いた島田は、「自分は失敗してしまったらすごく落ち込んだりしてしまうので、次にノーミスができたら自分を褒めてみようかなと思います」と感想を述べた。

 余裕をもった気持ちでジュニアを戦っていけば、来年の全日本では目標に近づけるかもしれない。

プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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