高橋大輔には「競技を続けてほしかった」振付師ブノワ・リショーも驚いたアイスダンス転向後の成長スピード (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

――『Pale Green Ghosts』は、ブノワさんの独特な振り付けと、高橋選手が見せる高い表現力が印象的なプログラムであったように思います。このような振り付けのアイディアはどのように思い浮かぶのでしょうか?

「私の振り付けやプログラムにインスピレーションを与えているものは、私の人生そのものです。今まで体験してきたことや、私の子供。それら私の人生すべてが、振り付けのインスピレーションになっています」

――高橋選手は2020年にアイスダンスへの転向を表明しましたが、前例のない挑戦は日本スケート界にはどのような意味があったと思いますか?

「アイスダンスへの転向は、日本のフィギュアスケート界にとって素晴らしいことだったと思います。もちろん、これまでの日本にも優れたアイスダンスの選手はいましたが、シングルで名声を得た選手が転向し、あれほどの並外れたスピードでアイスダンスをマスターした例は、今まで見たことがありません。

 通常ならば何年ものトレーニングが必要なレベルのアイスダンスの成績を、短期間で達成してしまいましたから。アイスダンスに関しては、キャシー・リード氏が若手選手の育成に関わっているなど、日本の明るい現状も伺っているので、これから才能を持つ新たな選手たちが頭角を現し、活躍してくれることでしょう。楽しみにしています」

――これまでは個人種目の選手が脚光を浴びることの多かった日本のフィギュア界ですが、近年は、アイスダンスやペアの選手たちが注目を集める機会も増えてきました。

「ペアやアイスダンスにおける日本の成長は、本当に素晴らしいと思います。フィギュアスケートの発展のためには、ひとつだけではなく全般のカテゴリで選手をそろえる必要がありますが、日本は、昨年の世界選手権で男子と女子のシングル、ペア、そしてアイスダンスとすべてにおいて際立つ存在力を見せてくれました。

 日本は長年の努力が実り、フィギュアスケート大国となったのです。これからはシンクロでも成長が期待できるのではないかと考えています。若い世代にとっても、競技をするカテゴリの選択肢が広まる理想的な環境です。今後、日本フィギュアスケート界はますます発展していくと期待しています」

(後編:日本フィギュアスケート界がさらに飛躍するために必要なこと>>)

【プロフィール】
ブノワ・リショー

1988年1月16日生まれ。フランス出身。アイスダンスのフィギュアスケーターとして活躍し、2009年に現役を引退後、音楽や衣装デザインなどに携わる。その後、デニス・ヴァシリエフス(ラトビア)からの依頼をきっかけに、2014-15シーズンに振付師としてフィギュアスケート界に復帰。2017-18シーズンから坂本花織の振り付けを5年間、2018-19年シーズンには高橋大輔の振り付けを担当した。今季は織田信成と三浦佳生の振り付けを担当する。

【クレジット】

写真:@peak-ice.com

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