高橋大輔「終わりでもあるけど、始まりでもある」 かなだいがエンターテイナーとして再スタート (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Aflo

●高橋大輔ならではのショー

 ショーの第2部では、村元がイタリア人マッシモ・スカリと組んで『Robin's Cello』を滑っている。高橋と組む時とは、また違った色気がほのかに立ち上る。

 かなだいの色が定着しているだけに、どこか背徳感も浮かぶ。それは彼女の表現者としての幅の広さなのだろう。パートナー次第で、何者にも変身できるのだ。

「(アイスエクスプロージョンは)大ちゃんが理想に描いた、クリエイティブで『高橋大輔ならでは』のショーになっていると思います! 本当に、キャスト一人ひとりの魅力を最大限に引き出してくれていて。スケートのよさ、アイスショーのよさ、をたくさんお届けできればと」

 彼女はいつものように、何より先んじて高橋に敬意を表した。凛とした協調性こそ、彼女の異能なのかもしれない。アイスダンサーとして寄り添ってきたが、付き従うのとは違う。言い方は難しいが、同志、同盟関係のようなものか、強い絆を結べるのだ。

 一方、最後にソロで登場した高橋は、しっとりとした曲調の『Bios, Krone』を滑り、そのステップでスケーターの迫力を感じさせた。ひと蹴りごとに伸びがあって、スケーティングの緩急で物語の起伏をつくった。

 低い重心で滑走し、指先まで神経を通わせ、音を丁寧に拾う。シングルスケーターからアイスダンサーになったが、彼はその枠組みに収まらず、フィギュアスケーターなのだろう。

「今回は再演だったので、同じことをしようかなと思ったんですが」

 高橋はそう言って内情を明かす。

「ふたを開ければ、もっとこうしたい、ああしたい、ということが多くて(笑)。時間的に余裕があるかと思っていましたが、今日(ゲネプロ)も押しちゃいました。

 スケーターとして魅せることに、より一層、こだわりが強くなっているんだな、と感じます。もっといろんな準備をして、こんなのがやりたい、というのがあって。本当、こういうことが好きなんだなと」

 稀代のスケーターは、確実に新たな一歩を踏み出していた。

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