キム・ヨナに勝つために。浅田真央が心に刻んだ決意 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

優勝はキム・ヨナ。2位には前回優勝のカロリーナ・コストナーが入った優勝はキム・ヨナ。2位には前回優勝のカロリーナ・コストナーが入った そんな状況で、最終滑走のキム・ヨナは五輪金メダリストの底力を見せた。

「復帰してからは結果を意識しすぎずに、気楽に演技できるようになった。そのためか、ジャンプも以前より楽に跳べるようになった」という彼女は、バンクーバー五輪の時より少し余裕を持たせた構成ながら、3回転ルッツ+3回転トーループをはじめとするジャンプを次々とクリーンに決めていく。そして、久しぶりの大舞台の雰囲気にも慣れたのか、観衆のほぼ全員を引き込むほど、濃密な演技を見せつけた。

 結局、2位コストナーには20点強、3位の浅田にも21点強の得点差をつけてキム・ヨナが優勝を決めた。

「6分間練習であれだけ跳べていたアクセルが本番では(両足着氷になり)残念だったと思うし、感覚のよかった3回転+3回転が入らなかったので最高の演技にはならなかったので、悔いも残ります。でも、シーズン初戦から今までの過程では、(今回は)本当に最高のものができたし、すべてが充実していたと思います。最初は跳べなかったトリプルアクセルを、ちょっとのズレのレベルまで持って来られたというのは、来年につながるんじゃないかなと思います」

 こう話した浅田の今回のフリーの演技構成基礎点を見ると、キム・ヨナより4点以上もいい。つまり、ノーミスで演技をしたうえで、ひとつひとつの要素を磨いていけば、十分に戦えるということだ。そうなれば当然、今は大きく開いている芸術要素点の差も詰まってくる。そのためにまず必要なのは、トリプルアクセルと3回転+3回転ジャンプを完璧に仕上げて自分のものにすることだろう。

「切磋琢磨できるいいライバルが復帰してきたことは、もちろん悔しい思いをする時もあるだろうけど、レベルアップするためにはいいことだと思います。今の時点では自分がミスをしている状態だから、まずはしっかりミスのない演技をして、それから『どのくらい争っていけるか』というのを確かめていきたい」

 今回の世界選手権で、キム・ヨナにハイレベルな演技を見せつけられただけに、浅田のモチベーションはさらに高まってきている。

 ソチ五輪まであと1年弱。浅田は、そこでライバルたちと互角以上の戦いをするという決意を、心の中にしっかり刻み込んだはずだ。

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