那須川天心を「未来の世界王者かを判断するのは難しい」 米識者たちはボクシング転向3戦目をどう見た? (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke

【今後、スターに"育成"するために必要なことは?】

 一方で、話を聞いたメディア関係者が那須川の才能を認めつつ、今後のマッチメイクには慎重な意見を述べていたのも印象的だった。

「ファンタスティックなタレントであり、将来が楽しみだ。まだ25歳なのだから、2024年は同じくらいのレベルの相手と戦って力を蓄え、2025年に世界レベルの戦いに乗り出すべきではないか。ワールドクラスの選手と戦ったわけではなく、どこまでいけるかを現時点で話すのは難しい。『世界王者になれる』と断言することもできないが、彼が正しい方向に向かっているのは事実だ」(トム・グレイ)

「3戦を終えたばかりの今の時点で、那須川が"未来の世界王者か"を判断するのは難しい。それでも、もっと強い相手との対戦を見てみたい気にさせてくれた。人気やスター性を考えれば、2026年までには世界戦線の準備が整うのではないか。その時まで、できれば頻繁にリングに上がり、スキルを磨いてほしい。輝かしいボクサーになるためのツールは間違いなく備えているため、順調に成長し、潜在能力をフルに発揮することを願わずにはいられない」(カルロス・トロ)

 そんな意見もあるが、那須川の人気や話題性を考慮すると、2025、26年くらいまでじっくりと育成することが現実的かどうかはわからない。ボクシングへの適応が進むにつれて期待も膨らみ、対戦相手の格が急速に高まることも考えられる。そこに人気ボクサー育成の難しさがあるが、百戦錬磨の本田明彦会長と帝拳ジムの手腕が、あらためて問われることになるだろう。

 いずれにしても、日本ボクシング界からまた新しい、楽しみな素材が出てきたことは間違いない。欧米ではまだ大注目の存在ではなくとも、彼らが那須川に気づくのも時間の問題かもしれない。今後、ステージが大きくなるにつれ、海外からの視線が徐々に熱くなっていくことは十分にあり得るだろう。

プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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