井岡一翔の強さの理由を内山高志は「脱力」と分析。大晦日の勝利の先に待つ中谷潤人戦も語った (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

 今年7月13日に行なわれたドニー・ニエテス(フィリピン)戦で、井岡はジャッジひとりがフルマークをつける、3-0の大差の判定勝利を収めた(117-111、118-110、120-108)。特筆すべきは、井岡にとってニエテスは、2018年の大晦日に判定1-2で惜敗した相手であることだ。

 内山氏はその圧倒的なリベンジ劇をこう振り返る。

「一度負けた相手にワンサイドで完勝するのはすごいこと。1戦目は、接近戦の打ち合いでパンチをもらっていましたが、再戦では積極的にジャブを突いてニエテスを入らせなかった。そして自分が打った後は、ニエテスが打ちづらい位置に動いて、頭の位置もずらし、効果的なパンチを出させませんでした。井岡選手のジャブは強く、パンチは多彩で上下に散らす。スキルの高さ、対応力の高さがよくわかる内容でした」

 そして何より、内山氏は井岡のすごさに「脱力」を挙げた。

「練習では脱力して打てていても、試合となれば誰しも少しは力むものです。でも、井岡にはそれがまったくない。力んでいないからこそ、予備動作がなくコンパクトにパンチが出せて、スムーズにコンビネーションがつながる。スタミナの消耗も抑えられて、12ラウンドでもペースが変わりません。

 井岡選手はパンチも軽く打っているようにしか見えませんが、29勝(15KO)と、軽量級ながらKO率は50%を超えています。パンチを出すタイミングと当てる角度がいいからこそでしょう」

 さらに内山氏は、井岡が脱力できる理由について、「まさに練習の賜物。井岡選手は基本のパンチ、同じ動きを何度も丁寧に繰り返して練習しています。シャドー、ミット、サンドバッグ、それを鏡の前で何度も確認......。それを、そのまま試合でも遂行している感じですね。パッと見、派手さや豪快さは感じないないかもしれませんが、攻防のスキルはどちらもとてつもなく高い。達人の域という感じです」と評した。

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