【男子柔道】「お家芸」の復活にむけて。井上康生新監督が行なう改革とは?

  • 折山淑美●文・取材 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

日本のお家芸復活に向けて動き出した井上康生新監督日本のお家芸復活に向けて動き出した井上康生新監督 男子柔道・井上康生体制の本格スタートとなったグランドスラム東京(11月30日~12月2日)。五輪イヤー最後のグランドスラムで外国勢もコンディションの調整が難しく、ロンドンのメダリストが10名と少ない中、地元開催で各階級4名まで出場できる有利な状況の日本にとっては、より確実な結果が求められる大会でもあった。だが日本勢の優勝は7階級中4階級で、日本勢同士の決勝になったのは60kg級と73kg級だけ。若手の活躍という収穫もあったが、井上監督が「これが今の現実と受け止めなければ」というように、厳しい現実を見せつけられる結果となった。

 その中でも収穫は、井上監督が「出場選手と組み合わせをみて、しっかりとっておかなければいけない階級だと思った」という60kg級と66kg級の優勝だ。60kg級は、準決勝でロンドン五輪銅メダルのフェリペ・キタダイ(ブラジル)を破った石川裕紀(了徳寺学園職)を、大学1年の高藤直寿(東海大学)が肩車で破って優勝。高藤は昨年、インターハイ、全日本ジュニア、世界ジュニアのすべてで圧勝し、今年は11月の講道館杯でも3位に入った逸材だ。

 本人は「すくい投げなど、来年厳しくチェックをされそうな技を出したのが悪いところ。練習している背負い投げをもっと磨きたい」というが、井上監督も「以前は肩車のような技しかなかったが、高校時代にあったルール改正にも対応し、しっかりモデルチェンジをしてここまで作ってきた。来年はまたルールが変わるが、運動能力が高いし適応能力もある選手。背負い投げや内股が中心になれば、飛び道具が生きる柔道スタイルになる」と評価する。

 また66kg級で優勝した10年世界王者の森下純平(筑波大学4年)も、講道館杯で情けない試合をしたために「彼自身がもう一度這い上がってくるのを期待する」と代表から外した選手。今大会欠場したロンドン五輪銅メダリスト海老沼匡の代役のチャンス生かせたのは大収穫だった。

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