栗原恵が女子バレー日本代表を分析 課題だったミドルブロッカー陣など新戦力が躍動も「パリ五輪の予選でも活躍できるのか」 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • Photo by FIVB

【長岡望悠の復帰に「しみじみ」】

――しかしトルコ戦では、2018年12月に2度目となる左膝前十字靭帯の大ケガを負った長岡望悠選手が、スタートから出場して躍動する姿も見ることができました。

栗原 5年ぶりの国際大会出場は、感慨深いものがあったでしょうね。昨年の世界選手権から、ライトはディフェンス能力が高い林琴奈選手が起用されていました。レシーブだけでなくサーブも非常に安定していて、「日本の女子バレーは今後、こういう形で進んでいくのかな」とも思える安心感がありました。そんな中で、攻撃力が高い長岡選手がライトに入り、チームの雰囲気がガラッと変わりましたね。

――長いブランクがあったにもかかわらず、チーム3位の12得点。十分に攻撃が通じていたように感じます。

栗原 それ以降は、予選ラウンド最後のイタリア戦でもチーム2位の15得点を挙げて勝利に貢献しましたが、その他の試合には出ていなかったので、膝の状態に不安がないことを願っています。でも、久しぶりに日本代表に戻ってきて得点も重ね、インタビューでケガの期間に支えてもらった人たちへの感謝の気持ちを熱く伝える姿を見て、「いろんなものを背負って戻ってきたんだな」としみじみ感じました。そういう彼女の経験が、日本代表の力になると思います。

――栗原さんも現役時代は多くのケガを経験し、リハビリを繰り返しました。共感できる部分もありますか?

栗原 そうですね。ケガをすると、プレーができる、コートに立てるという当たり前のことが、本当にかけがえのないものなんだということを実感します。長岡選手も代表戦の舞台に立って、よりそういう気持ちが強くなったんじゃないかと思います。おそらく、コートに立たせてくれるまで支えてくれた人たちの顔が頭に浮かんだんじゃないかと。今後もコートで、たくさんの笑顔といいプレーを見せてほしいですね。

(後編:「男子に比べて女子バレー日本代表は大丈夫か」の不安を払拭できるか ポジション別に評価>>)

【プロフィール】

栗原恵(くりはら・めぐみ)

1984年7月31日生まれ、広島県出身。小学4年からバレーボールを始め、三田尻女子高校(現・誠英高校)では1年時のインターハイ・国体・春高バレー、2年時のインターハイ優勝に貢献。2001年に日本代表に初選出され、翌2002年に代表デビュー。2004年のアテネ五輪、2008年の北京五輪に出場した。2010年の世界バレーでは、32年ぶりに銅メダル獲得に貢献した。その後、ロシアリーグに挑戦したのち、岡山シーガルズ、日立リヴァーレ、JTマーヴェラスでプレー。2019年6月に現役引退を発表した。引退後はバレーの試合での解説をはじめ、タレント活動など幅広く活躍している。

プロフィール

  • 中西美雁

    中西美雁 (なかにし・みかり)

    名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はweb Sportiva、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行なっている。『バレーボールスピリット』(そしえて)、『バレーボールダイジェスト』(日本スポーツ企画出版)、『球萌え。』(マガジンハウス)、『全日本女子バレーコンプリートガイド』(JTBパブリッシング)などを企画編集。スポルティーバで西田有志の連載を担当

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