「錦織圭がこの先、どれくらいプレーできるか、わからないから」元コーチ、ダンテ氏が思い出を語る (3ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【圭は素直に僕の言うことをすべて聞き入れてくれた】

「当時の錦織のランキングは......」とこちらが口にすると、ボッティーニは素早く「98位です」と応じた。豪放磊落に見えながらも「数字やデータに強く、指導もすごく細かい」という錦織のボッティーニ評が思い出された。

「2011年シーズンは、いいスタートが切れました。チェンナイ(インド)のツアーでベスト8に進出。ただ、そこで負けたヤンコ・ティプサレビッチ(セルビア)には、その後も最後まで勝てなかった。5戦全敗。しかもハード、ハード室内、クレー、芝と、すべてのサーフェスで負けましたからね。

 いずれにしても、僕と圭の1年目はすばらしいシーズンだったと思います。特にノバク・ジョコビッチ(セルビア)やトマーシュ・ベルディハ(チェコ)に勝ったバーゼル大会は、大きな収穫でした。

 最後は決勝でロジャー・フェデラー(スイス)に負けましたが、非常に安定した戦績を残し、シーズンが終わった時には24位にランキングが上がりました。シーズンが始まる時に98位だったことを思えば、圭がトップ30でシーズンを終えると信じた人は、ほとんどいなかったと思います」

 では、そのすばらしいシーズンを、ふたりはどのようにスタートしたのか? 社交的で人懐っこいアルゼンチンの若きコーチの目に、錦織はどう映ったのだろうか?

「圭は言葉数が少なく、自分から話すことは少なかった。だから僕も、最初はあまり圭に話しすぎないようにしました。代わりに僕がしたのは、観察です。彼がどのような性格で、どのように物事を進めていくタイプか、読み解こうとしました。

 同時に、ほかの選手たちがどのようにツアーで過ごしているかも観察し、多くを学びました。ラファエル・ナダル(スペイン)、フェデラー、ジョコビッチ......それにダビド・フェレール(スペイン)やスタン・ワウリンカ(スイス)もよく見て、使えそうなものは圭にも伝えるようにしました。圭はとても注意深く耳を傾け、素直に僕の言うことをすべて聞き入れてくれました」

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