錦織圭が可愛がる「195cmの目立ちたがり屋」坂本怜 全豪OPジュニアで優勝した17歳の正体 (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【錦織圭が「嫌だな」と認めた高身長からの攻め】

 その原点にあるのは、子どもの頃にテレビで見た、錦織圭や大坂なおみの衝撃だったという。

「僕は小さい頃、錦織選手をテレビで見て『すっげー』と感動して夢をもらって、希望をもらった。そのことは今でも覚えている」

 その衝撃こそが、長身の少年をアメリカに向かわせた原動力だった。

 果たしてIMGアカデミーに渡った坂本は、錦織と出会い、言葉を交わし、ボールを打ちかわす機会も得る。実際に接する憧れの人は、坂本を「れいちゃん」と呼ぶほどに気さくで優しく、身近な存在となった。ただ、ボールを打ち合えば、そこはやはり、世界4位に達しトップ10に居続けた偉大な選手だ。

「もっと攻められるボールがあったほうがいいと思う。これくらいの背の選手が相手なら、攻めてこられたら、僕は嫌だな」

 錦織に言われたその言葉は、深く心に刻まれた。

 ただ同時に、粘り強さや、ドロップショットなどの技が使えることも、自分の持ち味との自負もある。

「僕のプレースタイルは、サーブがあって、でも意外とシコい。シコさが、坂本怜のいやらしいところで」

 自身をそう評したのも1年半ほど前のこと。「シコい」とは俗語的なテニス用語で「ミスが少なく、粘り強い」のような意。攻めるべきだという理想像と、今まで築き上げてきたテニスとのせめぎ合いが、坂本の成長のプロセスだったのかもしれない。

 その相剋(そうこく)が噛み合い、プレースタイルが革新的に変わったのは、昨年の秋。兵庫、横浜、そして四日市と3週連続で開催されたATPチャレンジャー(ATPツアーの下部大会)に主催者推薦枠を得て出場した時だった。

 大会を重ねるたびに、長身の若者のしなやかな体と心に経験が注ぎ込まれ、器が急速に満たされていく。その事実は戦績を見ても明らかで、1大会目は予選の初戦敗退ながら、3大会目では世界111位の選手に勝利。本人が「刺激をもらった。自信もついた」と語り、IMGのコーチも「あそこから意識が急激に変わった」と目する、大きなターニングポイントだった。

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