土居美咲が語る、引退ラストゲームに訪れた幸運「これ以上ない、本当に最後のご褒美でした」 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

 キャリア最後の大会と決めて臨んだ東レの予選で、土居に幸運が訪れた。本戦に欠場者が出たため、本来、予選の2回戦で対戦するはずだった第1シードの選手が繰り上がりに。結果、土居は予選の初戦を勝った時点で、本戦入りが決まったのだ。

 その本戦初戦で対戦したのは、48位のペトラ・マルティッチ(クロアチア)。長く戦いの舞台を共有してきた、同期の選手である。その相手に土居は、ストレートで快勝した。

── マルティッチに勝ち、腰さえもてばトップで戦える力を示しました。そのことに、悔しさなどはありませんでしたか?

「いや、それはないかもしれません。たしかに自分の感覚でも、あと2〜3年は元気だったらやれたかな、と思います。でもだからと言って、どうとは思わないかな。これも自分が頑張ってきた証だし、選手寿命を引き延ばすことを選んだら、自分のよさが出なかったかもしれない。

 たしかに飛びまくったプレースタイルのおかげで、こうなったかもしれない。でも、あれだけ飛び跳ねていたからこそ、世界の30位まで行けたとも思うし......だから、そうですね、別に悔しさとかはないかな」

── そして2回戦、キャリア最後の対戦相手はサッカリでした。会見でも言っていましたが、今振り返ってもいい終わり方でしたか?

「もう、よすぎません? どうします、これ? こんな最後は想像してなかったので。予選の1回戦で負けていた可能性も十分にあったわけですし。

 去年、東レで(奈良)くるみの引退を見て、『あんなにみんなに祝福されて、こんないい終わり方があるんだ』って私は思っていたんですよね。その時は自分がこんなに早く辞めると思ってなかったんですけど、でも、自分はこんないい終わり方できるかな、とか、うらやましいなと思ったんですよ。

 実際に今年は、トップ100の選手とやる機会もなかった。それが東レで、予選をあんな形で上がり、マルティッチとやれた時点でめちゃくちゃうれしくて。

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