早田ひな、平野美宇、張本美和が世界卓球で証明 日本女子は絶対女王・中国を打ち破ることができる (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

【優勝を逃すも、張本は「伸び代」に期待】

 2勝2敗とされた日本は、優勝がかかった大一番を張本に託すことになった。対する陳夢も卓球王国の面目を保つため、並々ならぬ覚悟でコートに歩み寄る。張本ほどの若さであれば、初戦の敗北を引きずっていてもおかしくはない。だが、兄の張本智和が「大舞台でも臆することがない」と話すほど、彼女のメンタルは滅多なことでは崩れない。

 そんな15歳は第1ゲームからエンジン全開で飛ばしていく。陳夢の強打に対して打ち返しづらいミドルにカウンターを放ったり、要所で相手が反応できないほどのバックストレートへのドライブを決めたりと、一気に自分のペースに引きずりこむ。反撃の隙を与えないまま11ー4で先制した。

 しかし、ここから陳夢が息を吹き返す。ラリー戦では互角以上の戦いを見せる張本だが、ツッツキなど台上処理が少しでも甘くなると元世界女王は見逃してはくれない。そういった些細なミスを確実に得点へ結びつけられ、7ー11と第2ゲームを取られてしまう。

 第3、第4ゲームは後半でリードをする場面を作っていたが、陳夢の勝負強さ、粘り強いプレーに逆転を許して両ゲームとも奪われ、大金星とはならなかった。試合後には「リードしている場面とか、実力的な部分で差を感じてしまった」と張本は反省を口にしたが、「この大舞台を経験できて楽しかった」と笑顔で話す姿に、さらなる躍進を予感させた。

【パリ五輪はダブルスの出来が重要】

 惜しくも半世紀ぶりの優勝は逃したが、頂点に君臨し続けてきた中国を土壇場まで追い詰めた日本。それぞれの試合内容を見ても、パリ五輪での金メダルが近づいたのは間違いない。

 今大会は5試合すべてがシングルスの団体戦だったが、今夏の本戦では第1試合にダブルスが入るため戦い方が変わってくる。初戦を落とすと、その後のシングルスで3勝する必要があるため、中国に勝つためにはダブルスでの勝利が絶対条件だ。

 早田をシングルスで2試合出場させる"エース起用"と考えると、ペアを組むのは張本と平野が有力。すでにふたりは、昨年9月のアジア選手権や、今年の全日本選手権のダブルスに出場しており、徐々に手応えを掴んでいる。あと半年でコンビネーションプレーを突き詰めることができれば、打倒・中国、金メダル獲得が現実味を帯びてくる。

 とはいえ、脅威となる選手が現れれば徹底的に研究してくるのが中国だ。すでに新たな対策に乗り出しているだろう。それでも早田や渡辺武弘監督は「真っ向勝負」を掲げる。どんな対策を講じられようと、実力で打ち破る。そのレベルにまで達していることを、今大会で証明して見せた。"絶対女王"の牙城を崩す瞬間は、すぐそこまで迫っている。

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