佐古賢一が振り返るバスケW杯 富樫勇樹と河村勇輝の同時招集で「トムは賭けに勝った」 (2ページ目)

  • 牧野豊●取材・文 text by Makino Yutaka
  • スポルティーバ●撮影 photo by Sportiva

――今回は特に渡邊選手の存在が大きかった。

「大きかったですよね。あとベテランの富樫選手(勇樹/千葉ジェッツ)も忘れてはなりませんが、彼ら2人が若い選手に良いリーダーシップを発揮した。だから富永選手(啓生/米国・ネブラスカ大)や河村選手(勇輝/横浜ビー・コルセアーズ)たちは世界で勝つチャンスをもらっていると感じたと思いますし、川真田選手(紘也/滋賀レイクス)や吉井選手(裕鷹/アルバルク東京)などロールプレーヤー的な選手たちも同じだったと思います」

【 "賭け"に勝ったホーバスHC】

――そのチームを率いたのがトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)です。佐古さんは、現役時代は対戦相手として、現役引退後も交流の機会があったとのことですが、男子代表HCとしての手腕をどのように見ていますか?

「僕はトムの熱いスタイルは好きですね。トムが女子の代表監督をやっている時からいろいろ意見交換をしていましたけど、人間的に熱いタイプでないと、日本代表を引っ張っていけない」

――佐古さんも人間的に同じタイプで共感する部分が多い。

「そう(笑)。今の時代はいろいろ言葉や表現方法について、いろんな捉え方をされますが、代表戦って究極の闘いの場なんですよ。そこで勝つため、代表チームのように個性の塊のような集団を引っ張るには、トムくらいの熱さがないと戦えないし、勝てない。キツイ言葉や表現は、トップレベルだからこそ必要になってくる部分があると思います。その点は、東京五輪の女子代表の時に見る側の人たちに受け入れられていたことも大きかったし、選手たちも受け入れられたと思います。もちろん細かい部分の配慮もあったと思いますが、あの熱は、チームの力の源になったことは間違いありません。同じことを違うコーチがやっても、それがうまくいくかといえば違うと思いますが」

――ホーバスHCは最終メンバーの選考で、実力者とはいえ170cm前後のポイントガードをベンチ入り12人のうち2人入れたことは、世界で戦うという観点ではかなりの決断だったと思われますが、その点についてはどう見ていますか。

「まず、これだけ世界のバスケットボールが何でもこなすポジションレスな選手が主流になる中で、170cm前後のポイントガードを二人、しかも主力として計算して入れるというのは賭けの部分もあったと思います。でもトムからすれば、日本は日本のバスケットボール(速い展開から3ポイントを軸にした攻撃と常にプレッシャーをかけ続ける守備)をやらなければいけなかった。そこがブレなかった上での選択だったと思います。渡邊選手のリーダーシップ、ジョシュ・ホーキンソン選手(サンロッカーズ渋谷)の高さと献身、富永選手、比江島選手(真/宇都宮ブレックス)の3ポイントも確かに勝利へのカギとなりましたが、日本のバスケットボールのテンポを作り、スコアラーたちのために布石を打つのはやはりポイントガード。チームの成功という側面からもトムは賭けに勝ったといえます」

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