【NBL】今季キレキレの田臥勇太。NBL初代王者なるか? (2ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro photo by (c) Link Sports Entertainment Inc.

 田臥自身、「アメリカ時代も含め、これほどコンディションが良かったシーズンは初めて」と、レギュラーシーズンを振り返る。

 キレキレの理由を尋ねると、意外にも、「歩き方です」と言う答えが返ってきた。

「今シーズンは(身体の)メンテナンスを含め、コンディション作りをより細部にまでこだわったんです。最も重視したトレーニングのひとつが、日常を含めた歩き方を矯正するトレーニング。今まで、故障がちだった踵(かかと)をかばうように歩いていたんですが、足の裏全体に均等に加重して歩く姿勢になるトレーニングを、毎日、毎日、地味ですけど繰り返しました」

 その結果、田臥は今季レギュラーシーズン全54試合に出場。平均出場時間32.46分は、リーグ5位の長さだ。

「毎日バスケができることが、楽しくて、楽しくてしょうがなかった」という田臥は、シーズン中に不思議な感覚に陥ったという。

「シーズンが終わってほしくない。このまま、ずっと続けばいいのにって思ったんです。本当に、1試合1試合が愛おしかった。そんな想いが、プレイにもプラスに働いたんだと思う」

 もちろん、好調の理由は、体調や心理面だけではなかった。今、田臥には参考にしているNBAプレイヤーがいる。それは、ナンバー1ポイントガードの呼び声の高い「CP3」こと、クリス・ポール(ロサンゼルス・クリッパーズ)だ。

「クリス・ポールのプレイは、ピック&ロール(※)やハンドオフ(※)が多いんですが、一見単純に見えて、ディフェンスのポジショニングやカバーリング、そして状況に応じてドリブルの方向やスピードを細かく変化させているんです。プレイひとつひとつの意図を探りながら見ていると、バスケットボールの奥深さを今さらながら感じますね」

※ピック&ロール=相手ディフェンダーにスクリーンを仕掛けてマークを外し、得点を狙うチームプレイ。
※ハンドオフ=ボールを保持するプレイヤーがレシーバーに直接手渡すプレイ。

 今シーズン、過去最高といって個人成績を残した田臥だが、もちろんそれは自身の「数字」のためのプレイではない。

「チームが目指すスタイルがある。どうしたら一番貢献できるか、それを考えると、何かひとつのプレイに特化するんじゃなくて、パスもシュートも全部やろうと(笑)。もちろん、自信を持ってシュートを打ちますが、ドライブしてカバーが来てハードショットになったとしても、カバーが来た分、空いた選手がオフェンスリバウンドに飛び込んでくれると信じているから、思い切ってシュートを打てるんです」

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