【NBL】今季キレキレの田臥勇太。NBL初代王者なるか?

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro photo by (c) Link Sports Entertainment Inc.

 まさに崖っぷちの戦いだった――。

 4月27日、NBLレギュラーシーズン最終戦。リンク栃木ブレックスは、勝てばプレイオフ出場が決定。しかし、敗れた場合、他会場の結果次第では、掴みかけたプレイオフへのチケットが、その手からこぼれ落ちるという状況だった。

プレイオフ進出を決め、NBL初代王者を目指すリンク栃木ブレックスの田臥勇太プレイオフ進出を決め、NBL初代王者を目指すリンク栃木ブレックスの田臥勇太 栃木は終始リードこそ保つものの、決定的な差を付けるまでには至らない。それでも、勝利をたぐり寄せようと、集中力を切らさず試合を運んだ。試合時間残り30秒を切り、いよいよ勝利がほぼ確実になると、栃木の選手の表情に笑みが浮かび始める。そして試合終了のブザーが鳴ると、コート上の選手も、ベンチの選手も、プレイオフ出場を勝ち取った喜びを爆発させた。

 だが、ただひとり、田臥勇太だけは笑っていなかった。

「まだ喜ぶとこじゃない。ここは通過点」

 田臥はその時、すでに1週間後を見据えていた。

「プレイオフ初戦のことが頭を過(よぎ)りましたね。目指しているのは優勝ですから」

 今シーズンの栃木を大車輪の活躍で牽引したのは、もはや、「日本バスケ界のレジェンド」と呼んでいい田臥だった。レギュラーシーズン54試合で残したスタッツは、リーグ1位の1試合平均アシスト5.94、リーグ1位の平均スティール2.02、リーグ15位の平均15.6得点は、日本人では2位の成績だった。近年、使われるようになった試合での貢献度を表すEFF(※)は、リバウンドが強いインサイドの選手が上位に名を連ねる傾向がある中、ポイントガードである田臥の19.2という成績はリーグ15位、日本人選手では1位。これらの数字だけでも、今季の田臥がいかに圧倒的な存在だったのかが分かる。

※EFF=(得点+リバウンド数+アシスト数+スティール数+ブロック数+被ファウル数)-(シュート失敗数+フリースロー失敗数+ターンオーバー数+被ブロック数+個人ファウル数)により算出される、試合の貢献度・有効性を数値化したもの。

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