2026年のホンダのF1復帰を、過去ホンダを世界一に導いた技術者・浅木泰昭が展望する (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 樋口 涼●撮影 photo by Ryo Higuchi

【各チームのパワーユニット事情】

ーー現在のPUのレギューションでは2025年シーズンまでは開発凍結になっており、性能向上のためのアップデートは禁止されています。PUメーカーは新たなレギュレーションが導入される2026年以降の開発に注力しているのですか?

 完全かどうかはわかりませんが、シフトしないと間に合わないですね。信頼性にまったく問題がなく、直さなければならないところがなければ、全力で2026年以降にシフトしていると思いますが、少なくとも現行のPUでこれから2シーズンは戦わなければなりません。

 2025年型のエンジンを出荷し終わるまでは、信頼性に関する開発は続いていくと思います。それに信頼性を向上させることは2026年以降のPUにもつながる可能性はありますので、両にらみでの開発になるでしょう。

ーー2026年には新たなPUメーカーとしてアウディ、フォードがRBPTと組んで新規参入してきます。どのように見ていますか?

 ザウバーを買収してフルワークスとして参戦するアウディは、どういうPUのつくり方をするのか、詳細はわかりません。でも普通に考えて、かなり苦労すると思います。ホンダのように過去にF1に参戦していたメーカーでも一回やめてしまうと、順調に関発できるところまでもっていくまでの苦労が多かった。

 まったくF1の経験がないメーカーが始めるとなると、2026年のレギュレーションを見て、何が問題なのかを予測するだけでも大変だと思います。車体側がやらなければならないことは何で、PU側は何をして、PUと車体の双方がどういう協力をしていかなければならないのか。そういうことをちゃんと予測できる能力がないと、開発は大変です。

 さらにテストや開発のための設備をつくるところがけっこう大変です。設備が完成してきちんと稼働するようになるまでに数年かかります。そこから開発が本格的にスタートするのですが、まだこういう設備が足らないと気がついたりして......そんな感じで数年間はトラブルが続くと予想します。しかもPUメーカーにもコストキャップ(予算制限)が課されるなかで、アウディが数年でトップレベルのPUを開発するのは、かなりハードルが高いはずです。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る