ハース新代表・小松礼雄はF1でのキャリアは20年 最下位のチームをどう立て直す? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【「レース屋らしいチーム」への変貌に期待】

 今シーズン開幕時点でのハースの競争力は低く、最下位だろうと小松は言う。

 なぜならば前述のとおり、2023年型マシンが抱えた問題を開発陣が認められず、2024年型マシンの開発コンセプトでの設計がスタートしたのは昨年中盤と、ライバルの半年遅れだったからだ。当然、その後の実戦でのデータ量も乏しい。

「2024年型マシンが昨年よりも改善しているのは確かです。でも、それがライバルたちと比べて十分な進化かというと、開幕時点では十分ではないと思っています。僕たちがマシン開発をスタートさせたのは、かなり遅くなってしまいましたから。

 昨年、マシンコンセプトを変更したのがかなり遅く、オースティン(第19戦アメリカGP)でのアップデートを投入するために、そこに少し開発リソースを割く必要もありました。なので(今季開幕戦の)バーレーンGP時点でのマシンに関しては現実的な見方をしています」

 しかし、組織の問題が改善されていけば、マシンの問題点をきちんと把握し、前進していくことも可能だ。

「開幕時点でのマシンは昨年よりよくなっていることは確かですが、十分ではないでしょう。でも、そこからどれだけ改善していけるか──というところでこそ、このチームの真価が問われるのだと思っています」

 オーナーのジーン・ハースは昨年のチーム状況に苛立ちを募らせ、最下位という結果に不満を爆発させた。それは世間で言われているのとは真逆の、F1に対する情熱の塊(かたまり)だ。だからこそ小松をチーム代表に据え、改革へのサポートとコミットも約束した。

 シーズン開幕当初は、マシン性能も乏しく苦戦を強いられるだろう。しかし、それは小松の能力不足のためではなく、昨年までのツケを払わされているにすぎない。

 本当の勝負は、そこからいかに這い上がれるか。これまでのハースのイメージを払拭するような、チーム一丸となって猛スピードで駆け上がる「レース屋らしいチーム」への変貌を期待したい。

<了>


【profile】
小松礼雄(こまつ・あやお)
1976年1月28日生まれ、東京都出身。高校卒業後にイギリスに渡ってラフバラー大学で自動車工学を専攻する。大学院時代にF3チームのメカニックとなり、2003年にタイヤエンジニアとしてB・A・Rに加入。2006年からルノーF1(のちのロータスF1)でレースエンジニアやトラックエンジニアを務め、2016年に創設されたハースへ移籍。レース現場の技術責任者、技術部長を経て2024年よりチーム代表に就任。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る