日産が「雨に強いミシュラン」とのコンビで圧倒的速さ 台風のスーパーGTを制してランキング首位に (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【スコールが勝負の分かれ目】

 第3戦はやむを得ない理由により、レース途中で終了となった。だが、選手権ポイントがフルで与えられる「レース成立条件(全体の75%)」を超えているのに義務を消化していない車両が優勝になるということに対し、10チームが疑義を申し立てる抗議文を提出。結果、3号車のタイムに1分加算する措置がとられ、正式結果は4位となった。

「前回はいろいろなことがあって、そこに関しては自分たちも思うところはありますけど、そこはすべてを飲み込み、歯を食いしばって耐えてきました。だから今回勝てたことは、チームもすごくうれしい思いがある」(高星)

 土壇場で結果をひっくり返された悔しさを味わった3号車は、それを原動力に第4戦・富士では一致団結し、今度は誰にも文句を言わせない勝利をもぎ取った。

「チャンピオンを獲るには、やっぱりラッキーをモノにしないと難しいなと思っています。前回の鈴鹿は赤旗で途中終了となり、それは僕たちにとってはある意味でラッキーだったと思ったのですが、それは(再審議の結果)許されなかった。だから今度はもう1回、実力でがんばらないといけないなと思ったので、気合いが入りました」(千代)

 勝負の分岐点となった後半の急なスコールも、3号車は「雨に強いミシュラン」のよさをさらに引き出すため、積極的な行動に出る。

 レース中断中に千代がピットを離れると、コースサイドの客席エリアに移動し、周囲を見渡して天候変化や路面の状況を逐一報告。その状況をもとに、レース再開時に履くウエットタイヤの種類を最終決定した。

 作業禁止まで、タイムリミット2分前の決断──。結果、雨が止んで路面状況が変化しても対応できるタイヤを選べたことで、のちに後続を大きく引き離す快進撃を実現できたのだ。

 今回の優勝により、3号車のふたりはドライバーズポイントを49ポイントに伸ばし、ランキング首位に躍り出た。ミシュランのGT500活動休止もあり、今年のチャンピオン獲得に賭ける想いは誰よりも強い。

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