真夏の祭典・鈴鹿8耐は日本人にとって「心のふるさと」8時間という絶妙な設定が最高のドラマを生み出す (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

【独走で連覇したTeam HRC】

 耐久レースといえばフランスのル・マンやボルドールの24時間レースも有名だが、24時間というホンモノの長丁場は耐久ならではのコクと深みがある反面、スプリントレースの緊密な興奮はある程度減衰してしまう側面も否めない。つまり、鈴鹿の8時間というレース設定は、スプリントの興奮と耐久のドラマ性を最高のバランスで併せ持つ最適な長さ、というわけだ。

 だからこそ、グランプリ界のトップライダーたちが参戦するしないにかかわらず、8耐はいつもロードレース好きの琴線に触れる「心のふるさと」のようなイベントとして、今も昔も特別なものであり続けているのだろう。

 そんな8耐で、今年のレースを制したのはホンダファクトリーチームのTeam HRC with 日本郵便(高橋巧/長島哲太/チャビ・ビエルゲ)。今年のTeam HRCは、レース序盤のバトルから戦いを優勢に進め、中盤以降は全チームを周回遅れにする独走状態に持ち込んで、2年連続の優勝を達成した。

 昨年のレースも今年も、チェッカーライダーを担当したのは長島だった。長島は去年の8耐で初優勝を達成。今年は昨年に続き、2年連続でチェッカーライダーを担当した。

「昨年は初めて尽くしだったので何も考える必要がなくて、巧君とチームに引っ張ってもらい、自分の仕事をするだけでした。最後の走行を担当したのは2回目で、去年の自分ならもっと攻めすぎて転んでいたかもしれない。そういう意味では、昨年に勝ったからこそ、今年は後続とのギャップを考えて自分をしっかり抑えることができました。そこは昨年からの成長だと思います」

 スタートライダーを務めた高橋は、これで8耐最多優勝記録タイの5勝目に到達した。

「ホッとしています。僕の最後の走行では雨が降ってきて、『これはいじめなのかな......』と(笑)。あの場で転ぶわけにもいかないので、最低限のリスクで走ってバトンを無事に渡すことができてホッとしています。哲もチャビもいいペースで走ってくれたので、それが結果につながりました」

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