「ルクレールには負荷がかかりすぎている」。現役ドライバーだからこそ理解できる、フェラーリドライバーのストレス (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【現役ドライバーならではの視点】

「僕もいろんなマシンに乗ってきて思うんですけど、やっぱり"直線番長"のクルマのほうがいいですよ。そのほうが抜きやすいし、(コーナーが遅くて)うしろに迫られたとしてもコーナーでは抜かれないんで。

 基本的にオーバーテイクというのは、次のコーナーへのブレーキングで起きるものなので、次のコーナーまでに全開区間は必ずあるんだから、そこで引き離せばいいんです。そういう考え方で言えば、乗っている側からすればストレートが速いマシンのほうが全然いい。

 ただ、予選一発という観点では、コーナー重視だから予選は厳しくなる。だけど、RB18の場合はコーナーが致命的に遅いわけではなく、コーナーだってそれなりに速いので、ストレートが速ければ決勝で抜けますからね」

 ストレートでは圧倒的に最速で、コーナーではフェラーリやメルセデスAMGのほうが優れているものの、レッドブルも中団グループのマシンに負けるほどではない速さを持つ──。

 その絶妙なバランスが、シーズン全体を通して多くのサーキットで高い競争力を持つマシンパッケージにつながった。「ストレートが長く全開率が高いサーキットが多い現在のF1カレンダーを見ての判断だろう」と松下は推測する。

 さらには、マシン改良が進むにつれてフェルスタッペンのドライビングスタイルにマシン特性が合致していったことも、年間15勝という独走につながったと松下は見ている。

「F1って、ストレートではこう、コーナーではこう、この速度域ではこう......みたいに、常にいいところを取ろうとするんですよね。それがF1のすごさなんですけど、レッドブルはマックスのためのチームだし、どうすればマックスが力をフルに発揮できるかがすごくよくわかっているんだろうな、という印象を受けます。

 アスリートの友人ともよく話すんですけど、自分がプロとしてこのポジションまで上がってきたのは自分の強みのおかげであって、弱点を強くすることに力を注ぎすぎると、強みがほったらかしになったりする人って意外と多い。

 でも、レッドブルとマックスは『自分たちの強みはここだから、ここを極めるんだ』っていうその意思疎通ができている。だからこそ、マシン開発もマックスが行きたい方向にどんどん行っているんだろうなと思います」

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