ホンダが現実を思い知らされた今季F1の「ターニングポイント」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 テストでトラブルが続発し、「圧倒的な準備不足」で迎えた開幕戦オーストラリアGPでは、予想以上の暑さのせいで、PUを大幅に制限したモードに切り替えざるを得なかった。だが、もっと深刻だったのは、極めてコンパクトな設計のMGU-H(※)が想定していたエネルギーの半分ほどしか回生できない......という事実が判明したことだった。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 つまりホンダのRA615Hは、設計目標値よりもエネルギー回生量が少なかったのだ。開幕前のトラブル続発はまだしも、"本番仕様"のこの誤算はホンダにとって、最初の大きな挫折だった。

 彼らは、すぐにそれを深刻に捉えたわけではなかった。昨年のデータを見れば、ディプロイメントが不足するのは、ライバルメーカーも同じことだと思っていたからだ。ところが、自分たちのPUを走らせるだけで精一杯だったシーズン序盤を脱し、周りを見る余裕が出てくると、ライバルメーカーが昨年のディプロイメント不足の課題をほぼ完璧に解消しつつあることが判明してきた。

 ホンダがディプロイメント不足を解消するためには、ターボチャージャー(TC)とMGU-Hを設計変更し、配置レイアウトを変更して大型化しなければならない。

「ターボというのは開発の足が長く、6ヶ月は必要になる。その時点ではもう遅すぎました」(新井総責任者)

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