【F1】後半戦スタート。レッドブルの独走を止めるチームは現れるか? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし、走り始めてすぐに、思うように効果を発揮してくれなかったため、彼らはダブルDRSの使用を断念。そして、このダブルDRSを取り外すことになったため、大柄のリアウイングは薄い特殊仕様リアウイングに換装せざるを得ず、結果的にセッティングの面で迷路にはまり込むことになってしまった。さらに、決勝が寒いコンディションになったこともあって、ロータスは自分たちの持ち味を生かすことなくベルギーGPを終えてしまった。

 ただ、ロータスは次戦からはサスペンションの大改造によってホイールベースを変更するだろうと言われており、ダブルDRSの開発もあきらめてはいない。この開発を成功させることができるかどうかが、ロータスがタイトル争いに踏みとどまるカギになりそうだ。

 そんな中、上位では予選9番手から決勝で2位まで挽回したフェラーリのフェルナンド・アロンソだけが気を吐いたが、彼らも万全の状態でベルギーGPに臨んでいたわけではなかった。

 7月に入ってから風洞やCFD(空力コンピュータシミュレーション)の誤差問題で開発が遅れたフェラーリは、進めようとしていた開発を断念し、新たな方向性で開発を再開させた。つまり、およそ1カ月間をそのままロスしてしまったことになる。

「ダウンフォース(クルマを路面に押しつける力)の最大値を追求するのも良いけど、それよりもコーナーでずっと安定してダウンフォースが出ていることを追求した方が良いということが分かったんだ。今回持ち込んだ新パーツは、はっきりと目に見えるような進歩はないけど、その効果には満足しているよ。7月に失ったフィーリングを取り戻すことができたし、まずまずのレースウィークだった」

 アロンソはそう説明し、マシンの進歩に満足の意を表した。しかし同時に、純粋な速さではまだレッドブルには到底及んでいないことも認めた。

「僕らはセバスチャン(・ベッテル)よりもラップあたり0.2~0.4秒遅かった。彼に追いつくチャンスはまったくなかったね。2番目に速いマシンなら、2位でフィニッシュすることになる。今日はセバスチャンの健闘を称えるしかないよ」

 こうしてライバルたちが自滅していく中、特殊パッケージでのセッティングが「当たった」のがレッドブルだった。彼らはウイングだけではなく、ノーズの形状やリアディフューザー(床下)まで変更してきた。通常仕様の空力パッケージが熟成され、そのすべてを理解し尽くしているからこそ、正確無比なピンポイントの開発ができたのだ。

「クルマは思っていたよりも良かった。レースをコントロールするだけの速さがあったね。最初は、まさかここまでの速さがあるとは思っていなかった。ドライ路面ではメルセデスを倒すことができるだろうとは思っていたけど、ロータスやフェラーリに勝てるかどうかは分からないと思っていたんだ。彼らはドライではすごく競争力があるからね。今日は本当にレースを楽しめたよ」(ベッテル)

 こうして、ベルギーGPはベッテルとレッドブルの独走で幕を閉じた。この特殊パッケージをものにしたからには、次のイタリアGPでも彼らが有利な立場にいることは間違いないだろう。しかし、この状態がずっと続くわけではない。スパ、そしてモンツァという「特殊なサーキット」での勢力図に惑わされてはいけないのだ。

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