ELでリバプールが大逆転を逃した理由 遠藤航の課題は攻撃的に臨む試合への常時出場 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【冷静さを欠いたリバプールの攻撃】

 一方、スタメンに遠藤航の名前はなかった。不動のスタメンになりつつあったかに見えたが、ユルゲン・クロップ監督は、大逆転を狙うこの一戦に守備的な遠藤はそぐわないと判断したのだろう。実際、遠藤は第1戦で、0-2とされた後の後半31分、ベンチに下がっている。遠藤のポジション=アンカーにはアレクシス・マック・アリスター(アルゼンチン代表)が、インサイドハーフから1列降りる形で座った。

 2点差を追いかけようとしたとき、守備と攻撃の比重がざっと7対3の関係にある遠藤をピッチに置いておくと、攻撃に弾みがつかない。0-3で迎えることになったこの第2戦ではなおさらである。この日もアンカーにはマック・アリスターが入った。

 遠藤に出場機会が訪れるとすれば、リバプールが同点に追いつくか、逆転した後に限られる。そう考えるのは自然だった。

 結論を言ってしまえば、訪れなかった。リバプールはアタランタに対し、同点に追いつくことさえできなかった。

アタランタとのヨーロッパリーグ第2戦は出番がなかった遠藤航(リバプール)ZUMA Press/AFLOアタランタとのヨーロッパリーグ第2戦は出番がなかった遠藤航(リバプール)ZUMA Press/AFLOこの記事に関連する写真を見る そのサッカーは理詰めではなかった。攻撃に冷静さを欠いたという印象だ。敗因は数的有利な状況にある先述のサイド攻撃を追求できなかったことに尽きる。焦点なく攻めてしまった。両SBと両ウイング、すなわち、アレクサンダー・アーノルドとサラー/右、アンドリュー・ロバートソン(スコットランド代表)とルイス・ディアス(ポルトガル代表)/左が、コンビネーションを利かせ、アタランタのウイングバックを慌てさせる機会が少なかった。

 アタランタの前の3人(3-4-1-2の「1-2」)が真ん中に固まらず、ワイドに3FWっぽく構えたことも見逃せない。リバプールの両SBはその動きに牽制された。

 なかでもセンスが光ったのがトゥーン・コープマイネルス(オランダ代表)だ。表記上は2トップ下だが、実際は左右幅広く動き、持ち前のキープ力、突破力で存在感を発揮。左利きなのに左利きには見えない、懐の深い、進行方向が読まれにくいボール操作術でリバプールDFを慌てさせた。オランダ代表の同僚で欧州ナンバーワンDFの定評もあるフィルジル・ファン・ダイクでさえ、ギリギリの対応を迫られていた。

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