バルサとU-23日本代表の類似点と相違点 PSGにCL準々決勝で敗退の要因 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【守勢一方となったバルサ】

 バルサはそれまで左ウイングを務めていたラフィーニャを右にコンバートし、左にはそれまでインサイドハーフを務めたペドリ(スペイン代表)を入れた。典型的な中盤選手に左サイドをカバーさせようとした。純然たる両ウイングをピッチに残した大岩監督との違いになる。つまりバルサの4-4-1は、左ウイング不在と言われても仕方のない左肩下りの布陣だった。

 ここが試合のターンニングポイントとなった。

 PSGと言えば1トップを張るキリアン・エムバペ(フランス代表)に目を奪われがちだが、ルイス・エンリケ監督率いるこのチームは、先述のバルコラとウスマン・デンベレ(フランス代表)を左右に張らせるウイングプレーをフィーチャーしたスタイルが売りだ。リオネル・メッシ(インテル・マイアミ)、ネイマール(アル・ヒラル)が在籍した昨季までより、それは鮮明になっている。

 10シーズン前(2014-15)、バルサをCL優勝に導いたルイス・エンリケの采配は、シャビよりバルサらしい。

 バルサといえば、最近のファンならば中盤サッカーをイメージするだろう。シャビが選手として活躍した時代のバルサは、確かにともすると中盤重視のサッカーに見えた。アンドレス・イニエスタ、デコ、セスク・ファブレガスら小柄な中盤選手が活躍するサッカーである。ペドリもその流れをくむ選手になるが、伝統的なバルサの本質はウイング重視のサイドアタックにある。

 その昔、4-3-3を敷くチームは世界的に見てもバルサに限られていた。他にはオランダのチームと、ズデネク・ゼーマン(イタリア・フォッジャなどの監督を歴任)が率いるチームぐらいに限られていた。ウイング不毛の時代に両ウイングを据えて戦う姿に新鮮さを覚えたものである。

 バルサの監督だったヨハン・クライフはサイド攻撃の重要性、とりわけ、マイナスの折り返しがどれだけ有効なプレーかを、インタビューした筆者にしきりに説いたものである。

 10人になったバルサは守勢一方となった。特に左はサイド攻撃でPSGを慌てさせることがまったくできなくなっていく。PSGが合計スコアで2-4から3-4に詰め寄った前半41分のゴールには実際、両ウイングが直接的に絡んでいた。バルコラの左からの折り返しを逆サイドのデンベレが押し込むと、PSGの攻撃はいっそう活気づくことになった。

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