久保建英のCL挑戦終わる 異次元エムバペの領域に迫るためには何が必要か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【別格だったエムバペ】

「エムバペ、違うレベル」(『アス』)
「エムバペ、ベスト8に値する働き」(スペイン大手スポーツ紙『マルカ』)
「エムバペ、アノエタ(レアル・ソシエダのスタジアムの古くからの呼び方)の人々に夢見ることすら許さず」(スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』)

 各紙の見出しが表わしているように、キリアン・エムバペは異次元の存在だった。ボクシングでたとえるなら、久保がジャブやコンビネーションのうまさで玄人を唸らせ、ボディブローで確実に相手の足を削って苦しみを与える一方、エムバペは一発のパンチでノックアウトするパワーを持っていた。加速力と切り返しで翻弄したシュートは稲妻のようだったし、トップスピードでのコントロールからGKを逆方向に釣ってからのニアへの一撃も破格だった。

 エムバペを擁するPSGの軍門にくだり、久保のCLは終わりを告げた。もっとも、ベスト16という結果は悲観することではない。むしろ、祝福すべきだろう。

 グループリーグ、ラ・レアルは昨シーズンのファイナリストであるインテルを抑えてトップ通過したが、その躍進の中心は久保だった。ダビド・シルバが引退し、アレクサンダー・セルロートが移籍するという計算外のなか、開幕からチームを引っ張ってきた。アジアカップ出場で力を削り取られながらも(GKの起用法なども含めて、「本気でアジア制覇を目指していたのか?」と、指揮官の采配には疑問が残る)、PSG戦でも存在感は見せつけていた。

 久保は主力としてベスト16まで勝ち抜き、それは中村俊輔、本田圭佑、長友佑都、内田篤人、岡崎慎司、鎌田大地といった過去の日本人チャンピオンズリーガーとほぼ同じ境地に達した。22歳という年齢で、ここまでたどり着いた選手はいない。控え目に言って、快挙である。

 しかし、エムバペが映し出した現実もあった。W杯で2度ファイナリストになっているフランス人スーパースターは、来季レアル・マドリードへ移籍することが確実視されている。その力を世界中に証明したが、それはまさに魔物か、超人かのようだった。

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