久保建英、再び進撃の予感「マーク激化→より味方を生かす」サイクルを経て得点 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【周囲との連係向上も好材料】

 久保はほとんど10分で試合を決した。

 前半アディショナルタイム、左サイドでザハリャンのプレスがはまって奪い返したボールを、久保は右サイドで待って呼び込む。左足で敵センターバックが追いつけないところまでボールを運び、GK との1対1を右足でニアを抜いて決めた。冷静で抜け目がなく、果断なストライカー的ゴールだった。

 後半はホームのビジャレアルが戦意を上げ、リードしたラ・レアルがやや構えたことで、久保も地味な仕事ぶりになった。たとえば素早く帰陣し、相手のサイドバックの動きにフタをする。あるいは自陣でボールを収め、ファウルを受けて時間を作る。それらは"戦いの流れを与えない"重要な任務だった。それをやってのけられるからこそ、フルタイムでピッチに立ち続けたと言える。

 ビジャレアルの選手たちは時間を追うごとに苛立ちが目立つようになり、アレックス・レミーロの好守でゴールネットを揺らせない。相手のセンターバック、ホルヘ・クエンカは形勢逆転を狙って、ボールをキープする久保に襲いかかってきたが、くるりとしたターンで簡単に交わされ、シャツを引っ張って止めるしかなかった。それもやがて失速した。

 久保は久しぶりのゴールを決めたわけだが、そのプレーレベルは開幕から上がり続けている。

 ジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)を抑えて9月の月間MVPを受賞し、マークが厳しくなることは当然だった。包囲網が作られるなか、手荒いディフェンスも増えた。そこで、久保が複数の敵選手を引きつけることにより味方を生かす、新たな形が作り上げられていった。そのプロセスを経て、久保自身も久しぶりに得点を決めた。

 ひとつのサイクルを巡ったことで、次のサイクルで再び進撃が始まる予感がある。

 開幕直前のダビド・シルバの引退以来、ラ・レアルは断続的にケガ人が出て、厳しい状況だったが、そのたびに久保は周りの選手との連係を高めてきた。たとえばウマル・サディクのように単独のパワーとスピードで押しまくる選手には、あまり近寄らず、遠隔操作のようにその良さを生かしている。コンビネーションにおける適応力が突出して高いのだ。

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