久保建英、コンビネーションでハードワークを撃破 冷遇された古巣の監督を見返す (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【マジョルカでは合わなかったコンセプト】

 アマリ・トラオレがセンターバックを釣るように縦へ猛烈なスプリントした瞬間、久保は空いたスペースへカットイン。中央でミケル・オヤルサバルがニアに動いてディフェンスを引き連れると、フリーになったブライス・メンデスを見つけ、ピンポイントのクロスでヘディングでのゴールをアシストした。

 簡単に見えるが、極めて高度で美しいプレーだった。味方が絶え間なく仕掛ける連動に、久保も調和していた。だからこそ、"簡単に"アシストが決まった。

 スタジアムが先制点後のポズナンダンスで沸き返るなか、久保は半ば強引に仕掛け、ファウルを受けている。ここぞとばかりに相手の意気を挫く。これにチームが反応、一気呵成になった。久保はオヤルサバルに絶好のラストパスを右足で送り、これは防がれるも(その後のシュートはオフサイド判定)、完全にマジョルカの勢いを奪っていた。

 結局、チームは優勢のまま、1-0と勝利している。

 やや大げさに言えば、久保は世界中の指導者が躍起になる「ハードワーク」など、一瞬で"壊滅"できることを証明した。

「タケとイ・ガンインに起こったことは同じことだよ。何か違うものを持っていたわけだが、継続性が足りなかった。突然のブレイクは、2人とも今はそれができるようになっただけだ」

 マジョルカのハビエル・アギーレ監督は前日の会見で、かつて久保を冷遇した釈明をしていた。しかし彼が求める「ハードワーク」主体では、久保の才能を引き出すのは難しかった。コンセプトの問題だ。

 今のラ・レアルはコンビネーションでゴールを多く奪い、それを多発させるため、できるだけ高い位置でボールを奪い返す。攻撃優先のコンセプトである。だからこそ、久保は戦術のなかで進化した。一方、アギーレのサッカーは相手のスペースを消し、嫌がるプレーを多発させる「守りありき」。ミスを生じさせ、間隙を縫って得点を狙うもので、そのコンセプトだと、どこまでも体格やパワーがまとわりつく。

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