三笘薫はライン際の魔術師にとどまらず 迫力のドリブル中央突破はスケールを増した (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【先制点を生んだ一撃】

 それは逆サイドのソリー・マーチ対マット・ターゲットの関係にもあてはまった。ニューカッスルの左SBターゲットは10分、マーチに華麗な縦突破を許し、決定的な折り返しを送られた。ターゲットも専守防衛状態に陥ったため、前方で構える左ウイングのアンソニー・ゴードンは孤立。左右のウイングが、相手の両SBに対して優位性を発揮したことで、試合はブライトンペースで進んだ。

 ブライトンの主将ルイス・ダンクは、トリッピアーの背後に長いボールを蹴った。そこに襲いかかるように三笘が快足を飛ばす。27分に奪ったブライトンの先制点はこのワンプレーが発端だった。

 カバーに駆けつけた元イングランド代表GKニック・ポープがこのボールをクリアするも、エストゥピニャンがそのボールをハーフウェイライン手前でカット。ドリブルで縦に進出すると、左脇を併走する左ウイングの鼻先にパスを出した。三笘は左足シュート! 枠内を捉えた一撃はGKポープの左足に阻止されるが、その跳ね返りを今度はスコットランド代表MFビリー・ギルモアがシュートに及んだ。ポープがこれをはじくと、最後は18歳のアイルランド代表CFエヴァン・ファーガソンが反応。右足でネットを揺るがした。

 三笘はこの日、もう1ゴールに絡んでいる。後半20分にファーガソンのミドルシュートで2-0としたその5分後だった。攻撃の起点となったのはパスカル・グロス。次回のドイツ代表戦(日本戦、フランス戦)に32歳にして初めて選出されたMFは、相手ボールをカットすると右サイドに起点を作った。ボールはマーチ、元オランダ代表の右SBジョエル・フェルトマンを経由し中央のギルモアへ。三笘がボールを受けたのは次の瞬間だった。

 左から中央に入り、身体を右方向に向けながらそのパスを受けるかに見えたが、トラップの瞬間クィっと向きをゴール方向に変えると、猛然とドリブルを開始した。すると、左から右にウイングのポジションを変え、対峙する関係になっていたゴードンが、慌てて三笘の背中を押す。だが三笘は倒れない。それどころか、その力を借りるように前方向への推進力にした。

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