300億円のロナウド、150億円のベンゼマの次は誰か 巨額の金が動くサウジアラビアリーグ、国家プロジェクトの野望と背景 (2ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

【国家ファンドが国内4大クラブを買収】

 この動きの裏には、サウジアラビアの国家プロジェクトがある。今年6月5日に同国スポーツ大臣は、サウジ・プロリーグの改革案を発表。来る新シーズンを前に、アル・イテハド(昨季リーグ1位、ベンゼマが在籍)、アル・ナスル(同2位、ロナウドが在籍)、アル・ヒラル(同3位、メッシの獲得に失敗)、アル・アハリ(昨季2部リーグ優勝)の4大クラブを、国家ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が買収することが明かされた。

 これまではスポーツ庁に保有されていた4クラブを(名目上)民営化する形で、潤沢な資金を動かしやすくするのが狙いだと言われている。とはいえ、PIFはサウジアラビアの国家ファンドであり、2021年10月にはプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドを買収し、最近ではPGAツアーをLIVゴルフと合併させゴルフ界を実質的に牛耳ることに成功している。

 いずれにせよ動く資金が大きくなるのは明白で、プロリーグの年間収益を昨季の約167億円から、約670億円に増加させたい意向も。そして2030年までに、約3000億円規模のリーグとし、世界で10位以上の価値を持つリーグと認知されることを狙ってもいる。

 表向きの理由としては、きらびやかなスターを集めて、国内リーグを魅力的なものにすることで、国民のスポーツへの意識を変えたいのがひとつ。なぜなら、このサウジには、国民の6割以上が適正体重を超えている現状があるという。同国サッカー協会に登録している男子選手数を、現在の2万1000人から、20万人に増加させたい意向もあるようだ。

 またこれは政府が掲げる『Vision 2030』という計画の一貫だとも説明された。このプロジェクトにより、これまでオイルに頼っていた経済構造をより多様化し、医療や教育、インフラなどの公的サービスを発展させ、国外からの投資をより多く招き、王国のイメージを改善させようとしている。

 2030年に一定の成果を見込んでその名称がつけられているが、その2030年に開催されるW杯の開催も目論んでいるといわれる。そのためにも自国リーグのレベルを高め、ゆくゆくは代表の強化に繋げていきたいようだ。

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