給与未払いでオーナーは暴言、トラに遭遇、3日間停電...昨季インドでプレーした日本人サッカー選手が語る「すべてが想像以上だった」生活 (3ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by Uchida Kosuke

【サラリーの未払いは当たり前】

 内田のインド挑戦は約10カ月で終わり、いい思い出ばかりではない。それでも、現地の話を聞けばどれもインドらしさに溢れている。

 一番困ったのは、やはりサラリーの未払いだった。

スデバ・デリーのチームメイトと写真に収まる内田昂輔スデバ・デリーのチームメイトと写真に収まる内田昂輔この記事に関連する写真を見る「これまでも東欧や東南アジアでプレーしてきたので、給料の遅延はありました。でも、感覚的にインドは未払いが当たり前みたいな(笑)。チームメイトのなかには最大2年、未払いが続いている選手もいました。インド人の選手は寮に住んでいて、食事はクラブが用意してくれるので、最悪、お金がなくても生活はできます。若手なら活躍次第でISLに移籍できるチャンスもあるので、それにかけていたのかもしれません」

 デリーFC入団直後のプレシーズンでは、ネパールのチームとの練習試合のためバスで27時間ほど移動した挙句、ビザの問題で入国できず、国境検問所でチームと離れ、ウーバー(タクシー)での帰宅を強いられると、その道中で野生のトラと遭遇したこともあった。

「マネージャーとウーバーに乗っていたら、いきなり道にトラが出てきて(笑)。国境付近はベンガルトラの保護区になっていたようで、僕は少し見たかったので『車を停めてほしい』とドライバーに言いましたが、停めてはくれませんでした。あとで聞くとその地域では年間に何人もトラに襲われて命を落としているとのことだったので、納得しました」

 インド人との時間の感覚の違いにも驚いた。

「練習試合が朝の7時スタートだと思ったら、インドは7人制サッカーがすごく人気で、トレーニングの一環としてIリーグのチームも地元の大会に参加し、勝ち上がると決勝が深夜2時キックオフだったり。早い日は早いし、遅い日は遅いという感じで、もう朝なのか夜なのか、正直、時間の感覚がわからなかったですね」

 京都出身の内田だが、高校は神戸の強豪・滝川第二でデカモリシこと森島康仁と同級生で、ひとつ上に岡崎慎司、ひとつ下に金崎夢生がいた。「さすがに滝二時代も3日連続の試合はなかった」が、インドではプロチームがローカル大会に参加することも珍しくなく、3日で3試合という厳しいスケジュールを強いられたこともあった。

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