「現代における理想のウィングバック」菅原由勢は五輪落選、負傷、W杯落選を"肥やし"にしてオランダで日本人トップとなった (4ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

【ユキは最高の右サイドバック】

 こうして今季のAZでの活動を終えた菅原だが、「まだ代表の試合があるので、シーズンオフのモードに入ってスイッチを切ってはいけない」と日本代表に備えている。プレーを見て、話を聞き、身体つきや表情の変化を観察して、この4年間で随分とたくましくなったなと感じ入る。

 ならば、AZは菅原の成長をどう感じているのだろうか? ちょうど近くにパスカル・ヤンセン監督の姿が見えた。4年前、アシスタントコーチだったヤンセン監督は、オランダでの菅原をつぶさに見てきたひとりである。

「ユキはこんなに成長した」と言って、ヤンセン監督は右腕を高く掲げた。つまり右肩上がりの成長である。

「彼はテクニックとスピードがあり、いろいろなポジションをこなすことのできるモダンなサイドバック。ゴールやアシストを決めることもできます。私の目から見て、現代における理想のウイングバック。彼はMFでもプレーできる。ハードワークもする。そしてクレバー。

 コミュニケーションの成長も顕著です。彼は日本語しかしゃべれなかったから、(移籍当初の)半年は日本人女性に通訳に入ってもらいました。守備のこととか理解するのに、あの半年はとても重要でした。

 ユキは英語を勉強し続け、1対1でコミュニケーションをとることができるようになりました。また、結婚して娘さんが生まれて、人としても随分と成長しました。

 いいチームを相手に大きなスタジアムで戦うことがありますが、そういう試合でもユキは好印象を残しました。彼はうちのチームで最高の右サイドバック。フィットしているかぎり、彼には試合に出続けてもらいます」

 18歳から22歳にかけてAZスタイルのサッカーをマスターし、実戦で遺憾なく力を発揮するようになった。それが、菅原のオランダでの4年間だった。

プロフィール

  • 中田 徹

    中田 徹 (なかた・とおる)

    スポーツライター。 神奈川県出身。オランダを拠点に、2002年よりサッカーを主に取材。オランダスポーツジャーナリストクラブ会員。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る