久保建英、決勝ゴールの活躍に指揮官もご満悦。ソシエダで一気に輝きを増した理由とは? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「久保はチームに溶け込んできた」

 これだけ左利きに特化したチームもなかなかないだろう。ちなみに久保に代わって出場したモハメド・アリ・チョも左利きで、現在はケガで長期離脱中のエース、ミケル・オジャルサバルも左利きだ。

 チームとしてのテンポのよさか、あるいは"先輩"ダビド・シルバによる恩恵もあるのか。久保はどこか不得手にしてきた左サイドでも、活発なプレーを見せている。切り込んで際どいクロスを送り、ワンタッチでサイドバックのクロスを引き出した。左に張りつくのは苦手なのだろうが、ダビド・シルバがその特徴を引き出すようにスペースを与えていたのだろう。

 自らボールに寄るだけではなく、味方を動かし、味方に生かされる動きが目立った。

 前半24分の決勝点のシーンは象徴的だ。敵陣で味方がボールを奪った後、やや左で待っていた久保は、ゴール前に入ってメリーノからの左足のパスを引き出し、右足ボレーで叩いた。後半にも、バックラインからのロングボールを引き出し、チャンスを作った。過去、どのチームでも見たことがないほどに味方との呼吸が合っていた。

 一方、スモールスペースでの間合いは彼の真骨頂だった。

 得意のゾーンである右サイドへ流れ、1対1で封鎖されたように見えても、わずかにタイミングをずらすだけで中に合わせ、ダビド・シルバ、メンデス、メリーノのチャンスを作り出した。また、センターサークル付近でもカウンターのターンで三方から囲まれながらドリブルで突っ込み、決定的パスを出し、相手のイエローカードを誘った。

 78分に交代でベンチに下がるまで、ボールを持った時の強い自信が伝わってきた。

「久保は入団直後からチームに溶け込んできた。(開幕戦で)一番気に入ったのは役目に対する勤勉さだ」

 アルグアシル監督がそう指摘しているように、攻撃だけに気持ちが浮つくこともなかった。

 久保は左サイドを中心にしっかりふたをしていた。下がっての守備は強度があったし、プレッシングもパワーを使って行ない、何度か相手のパスを引っかけるシーンもあった。

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