EL優勝ビジャレアル、エースのゴール量産を支えた「キックの型」

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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サッカースターの技術・戦術解剖
第60回 ジェラール・モレノ

<キックのうまさでゴールを量産>

 ヨーロッパリーグ(EL)決勝、前半29分に、ビジャレアルはジェラール・モレノ(スペイン)が先制ゴール。後半にマンチェスター・ユナイテッドのエディンソン・カバーニ(ウルグアイ)に同点とされたが、PK戦の末にビジャレアルの優勝が決まった。

EL決勝で先制ゴール。クラブのビッグタイトル獲得に貢献したジェラール・モレノEL決勝で先制ゴール。クラブのビッグタイトル獲得に貢献したジェラール・モレノこの記事に関連する写真を見る ウナイ・エメリ監督はELのスペシャリストで、セビージャ時代には3連覇を成し遂げている。このファイナルでもマンチェスター・ユナイテッドのアタッカーのスピードを抑え込むために、4-4-2のコンパクトな守備ブロックを敷いて膠着状態に持ち込んでいた。

 先制点は、ダニエル・パレホのFKからモレノが合わせたもの。膠着させてセットプレーで得点は思惑どおりだっただろう。パレホの左から斜めに入れたロブは、ユナイテッドのビクトル・リンデロフとモレノの鼻先に落下。モレノがリンデロフの背後から足を伸ばして蹴り込んでいる。

 リンデロフの背後に入り込んだポジショニングは定石どおりだが、その時に腕をリンデロフの背中に当てて距離をとっていたのがゴールにつながった。リンデロフを進入させない「自分の空間」をつくっていたことで、先にボールにアプローチできている。

 モレノは今季2020-21シーズンに23ゴールをゲットし、リオネル・メッシ(バルセロナ/アルゼンチン)、カリム・ベンゼマ(レアル・マドリード/フランス)に次ぐ、ラ・リーガの得点ランキング3位。その前の2019-20シーズンもトップ3は同じで、モレノは18ゴールを記録している。

 左利きで、左足のキックに自分の型を持っている。PKのスペシャリストなのだが、その時の蹴り方にキックの型がよく表われている。右肩を前にして体を開いた状態からのシュートは、どちらの方向、どの高さにも正確に決められる。この体勢でボールを足元に置いたら、どこにでも蹴れる。

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